長瀧重信氏の言への反論 本文へジャンプ
 
2012年3月22日の朝日新聞朝刊に、東日本大震災1年、あすへの証言として「放射能リスクに向き合う」というテーマで、長瀧重信・長崎大名誉教授と村松康行学習院大教授の言が載っていました。
その中で、長瀧重信氏の発言内容への反論を自分なりに考え指摘してみました。
「データの公開・評価を徹底                    長瀧重信・長崎大名誉教授
 低線量被曝による健康リスクについて、政府は昨年12月、住民に避難を指示した基準となった「年間20ミリシーベルト」を「線量低減を目指すスタートラインとしては適切」との見解をまとめた。私が共同主査を務めた内閣官房の作業部会では、科学的事実から出発して、「年間5ミリシーペルトにすべきだ」という意見をはじめ、さまざまな意見の方を招き、インターネットで公開して論議した。
 本来は昨年4月に計画的避難区域などを決める段階で、このような論議が十分であったとは言い難く、政府が不信を招いたのは否めない。

 放射線の健康影響について国際的に合意を得られた科学的事実としては
、@広島・長崎の原爆被爆者調査がある。「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」の報告書では、100〜200ミリシーベルト以上の放射線を被曝するとがんのリスクが増えるが、それ未満の低線量ではリスク増加が認められないとする。 A「認められない」とは、はっきり認められる影響より小さいという意味だ。 「分からないから危険だ」という話ではない。
 B一方で、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告によると、原発事故直後の緊急時被曝状況では、避難など対策を講じるレベルを年間20〜100ミリシーベルトの範囲から選ぶことになっている。100ミリシーベル以下であっても被曝は少なければ少ない方が良いという防護の考え方であって、年間20ミリシーベルトを 超えたら危険という境界があるという意味ではない。
 チェルノブイリ原発事故後、支援のため現地を訪れた。政府は信頼を失い住民は大きな不安の中にあった。C学んだ教訓は、行政の徹底した情報公開、専門家の一致した確かな情報の評価、評価をもとに行政と住民が対話しながら対策を決めていくことの大切さだ。
 今の日本も、政府や専門家が住民の信頼を得られにくい。そういう状況でも、専門家が科学的事実から出発して説明しなければ、確かでない情報によって結果的に被災住民がさらに被害を受けることになってしまいかねないからだ。
@広島と長崎の調査結果が、何か科学的にとても正しいように言われていますが、実際は、被爆者全員を対象にしているわけでなく(ABCCの調査に行った人だけ)、多くの被爆者の状況(特に被爆地を離れた人)を把握しているわけではありません。私自身、長崎の被爆者ですので、確信を持って言えます。
A認められないというのは、はっきり認められないという事であって、安全だという事ではありません。誰にでも出るレベルでなく、人によって出たりでなかったりするレベルと考えられます。アレルギーを考えれば、敏感な人とそうでない人がいるのはいるのは当然です。それを「わからないから危険だ」と問題点をすり替えています。現在、東京でさえ、症状が出ている子供達がいます。全員に出なくては、安全だと言うのでしょうか。
BICRPの勧告は、事故直後の避難レベルとして、年間20〜100ミリシーベルトを言っており、1年後の現在までそれで良いとは言っていません反対に勧告111号では、緊急事態後の長期汚染地域に居住する人簿との防御に対する勧告で、20〜1ミリシーベルト、それも出来るだけ小さい方にして、1ミリシーベルトを達成してもそれで良しとするのではなく、可能な限り下げる努力をするようにと言っています。長瀧氏は、ICRPの勧告の緊急事態時のみを取り上げ、これからの長期に汚染地域に住み人達への勧告を全く無視して1年後にも緊急時の勧告を言っているのはどうしてだろうと疑問です。
Cチェルノブイリの事態を見てきた人が、どうして、チェルノブイリの経験を活かそうとしていないのか不思議です。原爆を落とし、その結果を人体実験と捉えて、治療をせずに、唯、データーをとったABCCのような科学的データーが、実際の緊急時に実施出来ない事は、今回のフクシマを見ても明らかです。サンプル数が不十分でも、そこに現れている被害状況を、見れば、チェルノブイリの結果をフクシマに反映させようと、心ある人は思うと考えます。現に、多くのチェルノブイリに行った方々は、その悲惨な状況を報告したり、手を差し伸べたりしています。

結論として、どうして長瀧氏の話を朝日新聞が載せたのか疑問になりました。
多くの人は、このような反論の根拠を知らず、長瀧氏の言う事が正しいと思ってしまいます。
朝日新聞は、そのように誘導したいのでしょうか。