高校での訪問講義

2010年6月26日に、出身高校で訪問講義を行いました。
主な目的は、薬学に進む生徒のために、薬学に進んだ卒業生の経験談を聞こうというものです。
しかし、私は、薬学分野で働いたわけではないので、薬学についてあれこれ話す事は気が進まず、私の人生で得たエッセンスをお話したいと思い、お引き受けしました。担当の方に、もっと薬学の話を入れて下さいと何度も注意されながら、1/4位をなんとか、薬学の話をしました。
その内容を以下に引用します。他の箇所に記載している内容とダブっている部分がたくさんあります。

「薬学から食品、そして環境へ」

皆さん、こんにちわ。三原翠と申します。

始めに、このように皆さんの前でお話しする機会を下さいました同窓会と先生方に心から感謝いたします。

まず、お話しする前に皆さんにお願いです。話を聞いていて、何かわからない事、或いは納得がいかない事があればどんどん質問して下さい。私は今日の講義の時間を、出来るだけ双方向性のやり取りこれをコミュニケーションと言いますが、このコミュニケーションをしながら、過したいと思っています。話の途中でもどうぞ遠慮しないで、手を挙げてください。

では始めに、皆さんが、薬学を志望しておられる方々だと伺っていますので、まず、薬学という分野の学問について少し説明します。今も昔も 化学特に有機化学と生体との関わりが中心の応用学問が、薬学ではないかと思います。単に薬というだけでなく、化学物資と生体との関わりを学んでいく学問ではと思います。化学物質の生体への影響を浅く広く学べるので、一番良い点は、実生活にとても役立つと言う事です。勿論、化学そのものの基礎をしっかり学びますから、一般に化学をやっていなかったら、怖がるような化学物質の構造などを見ても怖くなく、その物質の性質をあれこれ推測できるようになります。

では具体的に薬学について、お話します。参考資料と書いてある紙を見てください。私の学んだ千葉大薬学のHPに、薬学とはとあり、そこには3つの薬学から進む道が記載されていましたので、引用してあります。

1つは、薬剤師になり、薬局や病院で、調剤をしたりした薬の専門家の道、

2つ目は、薬などの研究者や、開発者になる道、ここには更にMRと言って、製薬会社で医薬品の効能を医者に説明する宣伝や営業的な仕事の需要が、たくさんあります。

3つ目が人々の健康な生活のための公衆衛生や食品衛生の分野で、私はこれに属します。

昔と異なり、今は、4年制と6年制になっていますが、1つ目の薬の専門家が6年制で、他は4年制の分野と思います。私自身、化学が好きで、同じ化学分野なら、資格が取れる薬学が良いと思って薬学に進みましたが、残念ながら、現在はそのようなわけには行かないようです。最も、4年制の薬学は国立大学がほとんどだと言う事で、薬剤師になるのなら私立という点は、昔も今も同じだと言う事のようです。

唯、薬剤師の資格についてですが、参考資料の3に引用してありますが、結構すごい供給過剰のようで、例え資格を持っていても、それで働けるかと言うと、難しいようです。4の現在の定員だけ見ても、え?って思いますよね。そうなると、最初の「薬学とは」に記載してある進むべき分野の2の研究開発やMRの分野と3の健康のための分野なら、むしろ4年制の方が有利のように見えてきます。今までは、私立国立の別なく、23に行っていたのが、4年制、6年制に分かれたお陰で、4年制の人数がずっと少なくなったので、行き易くなったとも考えられます。資格はないけど実はとれるような感じですね。資格についても、昔と異なり、今は、女性の雇用も広がっていますし、資格もいろいろなものがたくさんありますから、薬剤師にこだわる必要性は、あまりないのではと思います。

次に、薬学で何を学ぶかですが、基礎分野で、生物学、生命科学、基礎医学の生物系と化学の分析化学、合成化学、有機化学で、特に薬学の特色は、分析化学です。分析化学というのはとても地味な分野ですが、全ての基礎になる分野で、例えば環境汚染とか食品衛生とか、皆、現状の実態がどうなっているかの分析結果がなければ、何も進みません。

私が、厚生省の国立衛生試験所という所で行っていた仕事も、検定業務は、食品添加物の分析で、私は輸入食品の担当で、輸入食品の分析と分析法の開発を行っていました。最もこの検定業務は、私が入所して、5-6年でぐっと減っていって、研究の方に変わっていきました。唯、私のした仕事の中で、今でも残念に思い、今も皆さんにも関係している仕事が一つあります。今から40年以上前の話ですが、当時アメリカからの圧力で、グレープフルーツやオレンジ等の輸入のかんきつ類にカビ止めの食品添加物を許可しようとしていました。私がそのカビ止め剤がかんきつ類の可食部分に入るかどうかを調べる実験をやったのですが、普通では大丈夫なのですが、レモンの場合だけは、スライスして紅茶に入れる形にすると、このカビ止め剤が紅茶の中に入るのです。あの皮のぶつぶつの部分にカビ止め剤が溶け込んでいるのです。農薬なども同じなのですが。それで、レモンだけは問題だという報告を上に上げたのですが、残念ながら取上げてもらえませんでした。今でもレモンを見るたびに、心が痛みます。

あ、それからつい10年前に、ある食品会社に環境の審査に行ったとき、給食用に、オレンジをカットしてビニールに小分けしてある商品を見つけ、ビックリして、カビ止め剤が口に入ってしまうから、そのような商品は出さない用にと注意しました。レモンばかりでなく思いがけない使い方で、本来、口に入ってはいけないものが、口に入る可能性がある事を知りました。

その後の私の仕事は、研究業務も行うようになり、動物実験をして、化学物質の生体への影響を見るような事もしましたので、私自身は、この「薬学の学び」の中の基礎分野は、両方とも活用しました。

ここまでで、薬学の直接の話題はおしまいですが、ご質問がありましたら、どうぞ。

では、次に、先程と重なる部分もありますが、私の職歴についてお話しします。私の名前の書いてあるもう1枚の資料を見てください。私の場合、薬学を選んだのは大正解でしたが、その理由は、薬剤師の資格を持てた事と就職のため公務員試験の薬学を受験できた事です。薬学の公務員試験に合格した人は、ほとんど女性だけだったので、厚生省の採用面接で、相手側は、女性でも採用しないわけにいかなかったことです。現在は、薬学の課目がなくなって、化学・生物・薬学で、理工4となっているようです。その点でも、私にとっての薬学を選んだ正解は、残念ながら今は通用しませんし、薬剤師の資格も先ほど述べたようにもう正解ではありません。

私は、先程、チラッと言いましたが、大学を卒業して厚生省の研究所の研究公務員になり、そこでたまたま食品部に配属になって、食品に関わり、化学的な食品衛生、主に食品添加物関係の検定業務と食に関わる研究業務に携わり、16年間過しました。 丁度、下の子が小学生になった時、夫のために仕事を辞めました。と言うと聞こえがいいのですが、実際は、自分の能力の限界を悟ったからです。先が見えて、この先続けてもこの程度だなと自分でわかったので、辞めても良いわと夫に言った次第です。厚生省を辞めてから海外で、専業主婦を3年半近くやった後、帰国してから半年、仕事を探して、新聞記事で見つけた美容学校の薬剤師講師になり、5年間過しました。結局、私の人生の中で、薬剤師の資格が必要だったのが、この薬剤師講師の時だけでした。

その後、その学校がつぶれ、次に公務員時代の縁で、47歳の時、食品会社へ就職し、そこで環境問題に携わって、環境の専門家になりました。そしてこの環境の分野に変わった時に、実は高校の物理に何度も感謝しました。具体的には、環境マネジメントシステムの導入と言う事をやったのですが、会社の工場で、環境負荷を少なくする仕組みを作るということをやったのですが、まず居並ぶ機械を理解しないと、環境問題がどこにあるかわかりません。それで、その機械の役目や原理を聞いていきます。始めはぜんぜんわからない事もどんどんわからない事を質問していくと高校の物理にまで行き着いて、そして初めて「わかった」となるのです。わかれば、それなりに適切な対応が出来るようになります。その後、管理職定年になって出向した時、環境の審査員になりましたが、その時も、全くよその工場へ行って、そこの機械の環境負荷を考えたり、その工場の内容を理解しなければなりませんが、その時も、どんどんわからない事を聞いていって、高校の物理にまで行き着いて、「わかった」となりました。西高で物理を勉強していなかったら、ちゃんとした審査員にはなれなかったかもしれないと思いますし、工場へ行くのが、とても怖かっただろうと思います。本当に高校の物理に感謝しています。

それだけの理由ではありませんが、薬学に進む方は、是非、物理を高校時代でしっかり学んでおく事をお勧めします。何故なら、薬学では、物理はほとんど学びません、いわゆる物理、電気や力、音などの基礎をしっかり学んでおくと、わたしのように、少々異なる分野に仕事が広がっても、あまり困らないで済むと思いますし、それだけでなく、日常的に、新聞の科学欄を読んで、時代の常識を学ぼうと思ったときも物理の基礎は役立ちます。

大人になってつくづく思うのが、文科系の学問は、大人になってからでも結構基礎から学ぶチャンスがあるのですが、理科系の基礎は、なかなか学べないという事です。

と言う事で、私の職歴に関する話は、ここまでなのですが、ご質問があれば、どうぞ。

このように、私は薬学に進みましたが、結局、薬学を出発点としながらも、さまざまな仕事に付きました。これは私が女だったからなのであって、男だったら、始めの公務員をずっと続けていたと思います。当時の西高生は、男は皆、そうですし、社会全体がそうでした。

今日、本当は皆さんにお話したい事は、薬学と言うだけでなく広く社会に出て働くために、必要な事、私の65年間で得た活き活きと生きるためのポイントをお話します。それは全部で4つあります。そのうち2つはいわば基礎編で、これから、皆さんが生きていくうえで身につけていただきたい考え方です。後の2つは更にステップアップするための技術と考えて下さい。

では順に説明していきます。そのうち一つでも皆さんのお役立てば嬉しい限りです。

皆さん!今やっている勉強は面白いですか?面白いと思って勉強している人は?

少ないですよねー。私もそうでした。受験勉強がいやで、でも大学にはいかなければと思っていたのでそれなりにしましたが・・・。でも後になって、高校で学んだ事、特に受験課目にしたものがこんなにも社会に出てから役立つとは、思いもしていませんでした。物理のお話はしましたが、それだけでなく、大人になってからわかったのが、学校の勉強は大人になってからの常識を学んでいたのだと悟りました。出来れば受験という形でなく、物事を探求する心を養いながら勉強できたら一番よかったのでしょうが。

ですから皆さん、今の勉強は必ず後で役立ちますから、勉強しておいても本当に損しません。常識のある人と思われるかどうかが、学校の勉強をちゃんとしたかどうかなのです。

でも大事なのは、学んだ事を唯、覚えるのではなく、自分でしっかり納得出来ることです。どうしてそうなるのか、それを納得出来れば、覚える事はそれほど多く必要ありません。

こう言うときっと皆さんの中には、「そう言っても数学なんて、微分積分なんて役に立つのかな」と思われる方がいると思います。私の場合、今まで微分はそれほどでもないですが、積分は、図を理解したりする時に役立ちました。無論、計算なんてそもそもあまり出来ませんでしたが、その意味は理解出来ていたので、役に立ったのです。全然勉強していなければ、理解する事がどれだけ出来たかと思います。

要は、勉強したら自分で納得出来ることが大切で、では納得出来るというという事はどういうことでしょうか?

ここから、私がこれから社会に出て行く若い人達に是非、お伝えしたい4つのポイントの第一のポイント「自分の考えを持つ、ポリシー(信念)を持つ」ということです。

先ほどご紹介した私が仕事をしている時に、いつでも念頭に置いていたのが、自分が正しい或いはやるべきと思っている事をちゃんとやる事でした。

研究公務員の時代、私は自分に課していたのが、年2回の学会発表と年1報の論文を書く事でした。検定業務もある研究者でしたので、研究発表は義務ではありませんでしたが、自分なりにそう決めていました。ですから、夫の仕事のために私が辞める決心をした時、それまでの仕事をまとめて、博士号を取得する事ができました。

また、会社に入って、丁度50歳の時に、環境の仕事についたのですが、環境問題を進めるにあたって、当時の上司の言いなりにはならず、自分なりに正しい、この方が真に会社のためになると考えたやり方で仕事を進め、結局、それが幸いして、管理職定年になった時、新たな資格を得て、再出発する事が出来ました。

ではどうやって、自分の考え、ポリシーを持つことが出来るのでしょうか。

それにはまず、自分の考えの基礎を作る必要があります。

多分、人によってそれぞれ異なっているのではと思いますが、私の場合は、ある経験から命がとても大切である、生きている事はなんて素晴らしい事なのだという事を悟りました。命が大切であるという基礎が出来てからは、いろいろな事を考える時に、その良し悪しを考えていって、命の大切さに結びつくとその考えは正しいと思って、自分の考えの中に入れて行きました。考える種は、実際に自分の身近で起こった出来事もありますし、新聞記事を読んだりして、それが正しい事なのか、或いは正しい事はどこにあるかを考えては、結局、命の大切さに結びついた方を正しいとして自分の考えに入れていきました。考える時間は、電車の中とか寝る前とか、暇な時です。

私がどうして自分の考えをしっかり持とうと考えたのは、皆さんと同じ頃、太平洋戦争からまだ10数年だったわけですが、戦前の軍国主義に従った人々を、愚かな人や間違った人達のように非難する傾向がありました。でも、私はその頃自分が戦前に生れそだっていても、その愚かな人にはならないでおけるだろうかと思いました。教育でこれが正しいと植え込まれたら、自分も戦前の人達と同じになるのではと思いました。そうならないためにはどうしたら良いかと考え、周りの人や風潮に流されない自分の考えを作らなくてはいけないと思っていました。それで、別の理由で、生や死について考えていた事もあり、周りに流されない自分の考えを作っていこうと思い実行しました。

半世紀に及ぶ人生で、ずっとそうやって、いろいろな考えを納得出来れば自分に取り込む事をやってきましたので、ある時、ふっと気づくと系統樹のようになっている事に気づきました。それで、私はこれを考えの系統樹と呼んでいます。命の大切さという基礎の上に木が生えるように、考えの系統樹が出来ていました。

いろいろな問題に関しての考えの理屈は、枝から幹へそして根へと、理論付けられていて、基礎の命の大切さにしっかり根を張っているのです。ですから、何か問題が起こった時、似たような事象の枝を捜すと、その後の理論は既に出来ているので、さっと答えが出てきます。全く見当たらないと、ペンディングにして、時間をかけて、その問題を考えます。実際問題としては、ペンディングにしているものは、あまり議論したりしないで、意見を聞くに留めます。そして納得出来る答えが見つかれば、新たに系統樹に取り込みます。

このように考えの系統樹を作ってあると、どのような問題にでも自分なりの意見が言えたり、自分の意見を考えるのに時間がかからないので、その間に別の見方をする余裕があって、他の人と異なる意見を言えたりします。

この考えの系統樹に気づいたのは、比較的最近の事ですが、もっと前から、私自身、ちょっと話しただけで、その人の能力が結構わかる気がしていました。今から思うと、それは、その人が考えの系統樹をもっているかどうかで判断していたということだったのではと思っています。

唯、人によって、考えの系統樹のようにはっきり意識していない場合もあるようで、それぞれいろいろな形になっているのかなと思っています。あまり人に聞けない話題なので、それほど調べてありませんが。

考えの系統樹を持っていると、自分の意見がぶれませんし、他の人と議論をした時に、余裕があるので、相手の立場で考えて、意見を言う事が出来るので、分かり合える事が多いのではと思います。又、何かアクシデントが起こった時、すぐに起こるかもしれない次の事が思い浮かぶので、悪い事が続かないように手を打てるのです。いわばリスク対策が、しやすいのです。悪い事は友達を連れてやってくると言うことわざを聞いたことがありますか?悪い事が起こると次々に悪い事が続くというのです。そうならないように自分が気をつける事が出来るので、悪い事は一つでおしまいに出来ます。勿論、その前に、新聞が一番良いのですが、いろいろな事件の記事を読んで、起こりそうな悪い事の事例を頭に入れておくことが必要ですが・・。

又、考えの系統樹を持っていると、喧嘩をする時が、一番有効です。状況を見て自分が勝つか負けるかすぐわかるので、勝つ喧嘩しかしないで済むようになります。勝つことがわかっていると余裕を持って喧嘩できるので、相手に恨まれることがないような喧嘩にもっていけます。喧嘩が喧嘩でなくなるわけです。余裕があれば、リップサービスも出来て、相手も喜ぶわけです。

考えの系統樹を作っていく時、自分が納得出来ることが大切です。納得出来るということが、系統樹の理屈が正しいという事です。納得できなければ、どうしてか聞くなり、自分なりに考えるなりして、納得がいけば自分の系統樹に取り込みます。

これからは皆さんに是非、今日から、自分なりの考えを作ることを始めて欲しいと思います。

どうですか?  出来そうですか?

唯、この基礎を何にするかについては、よくよく考えて下さい。ある程度大人になってから、考えを作り出すと、自分が働く事、家族のために稼ぐ事が基礎になってしまっている人もいます。そうすると定年になった途端とか、自分が稼げなくなると、自分の存在意義がなくなったように感じて、自殺したりします。

或いは、この基礎を宗教に持っていく人もあるでしょうし、国に持っていく人もあるかもしれません。戦前の軍国主義は、まさしくその基礎が、天皇を神とした日本国だったわけです。宗教での失敗例が、オウム真理教ですね。

基礎をいつまでも、変わらないものに置けば、考えは、いつまでの安定し、安心できます。

あれこれ発言がぶれる政治家に限らず、そのような人は、多分、自分の考えの系統樹がないのだろうと思います。そのような人は、自分の発言に対し責任を取らず、責任を取るという発想もないのではと思います。

又、この考えの系統樹をもっていると、人生のいろいろな経験をしっかり積上げていく事ができます。

この考えの系統樹について、質問はありませんか?最も私の経験以外は答えられませんが。

皆さんに2番目にお話したいポイントは、私は50歳になるまで知らなかった事で、これをどうしてもっと早く教えてもらえなかったのかと悔しかったです。もし、これを早くに知っていたら、私は研究者でずっと生きていけたかもしれないと思いました。

その第二のポイントは、単なる知識ではなく、知恵を身に付ける事です。その知恵とは何かというと、PDCAで表されるマネジメントシステムの考え方です。

あ、PDCAって聞いた事のある方?    いないですね。

プリントに書いてありますが、PDCAPPlanDDoCCheckAActとかActionとか言われます。まず、Plan計画を立てて、Do実行し、Check点検してActその結果に基づいて次の計画を立てる事です。

これだけではわかりにくいですよね。

皆さんにとって一番わかりやすい受験勉強の仕方をこのPDCAで説明します。

まず、学校での試験があります。皆さんはいつ試験があるということになると、この範囲から出題されるから、このように勉強の計画を立てようと思って、スケジュール表を作って机の前に張り出したりしますよね。これがPlanです。勿論、良いプランは、現状を把握し、自分の弱点をしっかりカバーするような勉強計画になるとよいのですが、ま、いずれにせよ、計画して、実行、Doです。スケジュールに沿って勉強をしますよね。そしてCheck 即ち、学校の試験になるわけです。そしてその点検の結果である試験用紙が返ってきます。試験用紙の点数だけ見て、がっかりしたり私はしていたのですが、本当は、ここからが大事なのです。試験の結果、どこを間違えているのかしっかり点検し、その部分をしっかり勉強しなおします。わからなければ先生に聞いてください。こうして間違えたところを二度と間違えないようにしたら、これが再発防止策なのですが、PDCAの最後のActが終わります。そしてこのような勉強の仕方をした皆さんは、学校の成績はそれほどではなくても、入学試験には受かります。なぜなら、学校の成績は、このPDCACheckActが終わる前の状態です。しかし、入学試験は、しっかり弱点をカバーした再発防止策をした後ですから、弱点がほとんどなくなっていて、良い結果となるわけです。

PDCAはこのように、物事を進めるためにはとても良いツールなのです。

私がこのPDCAのマネジメントシステムを知ったのは、50歳の時で、丁度環境問題を始め、そこで環境マネジメントシステムを知ってからです。これを知った時、何故この考え方を小学校で教えてくれなかったのかと思いました。Check, Actを身につけておけば、皆、基礎をしっかり付けて上の学校へ行けるはずです。

私は、このPDCAでダイエットをして8kg減量しました。最も今は少し戻していますが。

PDCAのマネジメントシステムに関して、質問はありませんか?

今お話した考えの系統樹とマネジメントシステムの考え方は、これからの社会を生きていく上では必須の事になっていきます。自立した考えを持つ事と、物事を進めていく知恵を身につけておくことです。この二つは、是非、今日から始めて下さい。

皆さんは、まだまだ時間がありますから、ゆっくり、じっくり取り掛かって下さい。あ、試験で間違えたところをしっかり勉強するのは、すぐ始めて下さいね。

ここまでお話した2つのポイントは、今までの社会でも必要だったし、これからも必要な基礎編です。

次にお話しするのは、これからの社会に出てから、活躍出来る、活き活きと働けるために、大学で是非やっておいて頂きたい事、応用編のポイント2つをご紹介します。

この2つは、私は出来ていませんし、出来なくても何とかなる世界に私はいました。しかし、これからの社会で働くためには、必要な事です。

応用編の一つ目のポイントは、ITいわゆるコンピューターを使いこなす事です。ITをしっかり学んで、簡単なソフトを作れるくらいは、身につけておく必要があるということです。私は、これをITの脳化と読んでいます。脳のIT化ではありません。脳をIT化すると、応用の効かないつまらない人間になってしまいますが、ITを脳に入れ込むというような考え方です。

脳については、皆さん、左脳と右脳がある事はご存知ですよね。左脳が論理脳と言われていて、理屈の脳で、コンピューターはこの左脳と同じような働きをすると私は思っています。右脳は、パターン認識や全体の把握をする脳と考えられています。ですから、脳のIT化では、右脳の働きを無視する事になって、より悪くなるだけです。

今までは、社会ではITといわれるコンピューターは、道具の一つと見なされ、いわゆる手足のようなものと思われていました。しかし、最近は、ITは、単なる道具ではなく、例えば、自分がこの仕事をしようと考えるときに、コンピューターを使うとどのように仕事の効率を上げられるかも考えることが必要で、単にその仕事をするだけでなく、如何に効率的に仕事を進められるかも考えて、仕事をしなくては、ならないという事なのです。コンピューターを本当の意味で自分の仕事で使いこなせる事が必要になってくるのです。今までのような手足のようなパソコンではなく、頭の中にパソコンを入れて考えるような感じです。

その為には、本当だったら学校で、どんどん学べればいいのですが、現在は無理なので、大学に入ったら、どの分野に進もうともIT技術をしっかり身につけて、社会に出てください。

このITの脳化、この言葉は私が作ったものなので、一般的ではありませんが、何故、私がそう考えるようになったかを、説明して、皆さんにも納得していただければと思います。

ある中小の製造業で、若いIT技術者を雇って、ベテランの熟練者と組ませて、匠の技の継承を行ったそうです。するとベテランは今までの自分の仕事を客観的に見れるようになっていろいろな発見があり、IT技術の若い人は、匠の技を学びつつ、それをIT化していき、仕事の効率が上がって経営が良くなっただけでなく、その出来上がったソフトを売って、更に儲ける事も出来たそうです。

身近な例では、私の息子の一人は、経済学部に進んだのですが、卒業後、パソコンが全く使えなかったのですか、ITのベンチャー会社に就職して、3ヶ月間の猛特訓の末に、SEシステム・エンジニアになりました。その後、勉強をしなおして公認会計士になって、現在は、仕事をIT化しながら、職場全体の効率を上げています。

結局、どのような仕事もIT化する時、他人にIT化を頼んだのでは、その仕事への理解が十分でないので、最も最短の経路でのIT化にならないのです。目的地には着くけど、回り道をして到達する場合が多いのです。しかし、自分のやっている仕事をIT化するのなら、最も単純にソフトを作ろうとしますから、最善のソフトが作れるわけです。

これからの社会で、効率を上げて仕事を進めていける人間は、どのような分野においても、尊重される事でしょう。多分、芸術の分野を除いて、全ての分野で、研究でも、製造でも、営業でも、流通でも、ITの技術を持っていることが、効率を上げ、成果を上げる事に貢献する事になるでしょう。

是非、大学時代にIT技術を学ぶ事をお勧めします。

応用編の2つめ、全体の4つ目のポイントは、英語です。

今まで述べてきた事、そして更に大学で学ぶ事、今まで学んできた事、これら全てを英語でも出来る事が、これからの社会では必要になります。今までだって、必要だったのですが、グローバル化がそれほどではなかったので、日常ではほとんど必要かなかったのですが、これからは違います。最も私は英語が駄目だったので、そのような経路の人生になったのであって、英語が出来ていたら、もっと仕事が広がっていたのではないかと思います。

現在、男性と同じように、いや男性以上に海外で活躍している女性が多いですが、日本の中では男女差別で活躍できないけど、海外では英語にたけた男性が少ないので、女性が活躍出来ているのではと思います。

ごく最近、日本企業が韓国の若者を社員として雇い始めたとニュースにありました。企業がグローバル化し始めているのに、日本の学校教育が追いついていない為、そうなって来た面もあるのではと思っています。

これら4つのポイント、1つめ自分の考えの基礎を構築する事、2つめマネジメントシステムの考え方を身につける事、3つめITを身につけ、ソフトを作れるくらいまでになっておく事、4つめ英語を堪能になるようにしておく事をこれらを身につけておいたら、皆さんはこれからの人生で仕事に困る事はなく、しかも余裕を持って仕事を楽しみながら人生を送れると思います。是非、皆さんが身につけられる事を願っています。

私は、始めのポイント、自分の考えの系統樹を作る事しか出来ませんでしたが、多分、これがあったから、仕事を続けてこられたのだと思います。

皆さんも最近の経済の落ち込みで、大学を卒業する人達が、内定を取れないという事をお聞きになっていると思います。その中で、内定を取れる人はいくつも取れて、取れない人は、何十件受けても全滅だという話があります。私は、内定の取れる取れないは、自分の考えを持っているかどうかにかかっているのではないかと思っています。何分間か話をするだけで、十分、その人が自分の考えを持っているかどうかわかるでしょうから。

なにか質問はありませんか?

                 − 中略 −

日本の学校では、唯、知識を教えています。昔に比べれば、今はもっと良くなっているのかもしれませんが、授業が一方的な知識の供給の場になっています。

しかし、社会が要求しているのは、知恵を持った人間です。知恵を持った人間とは、自分の考えを持ち、知識を知恵に変えられる、或いは知識を応用する事が出来る人間です。

二人の子供の違いは、性格の違いが一番あるのかもしれませんが、自分の経験も含め、何より、苦労をした方が強くなれて、本人のためになるという事です。ですから、皆さんには、現役で大学に入る事は必ずしも良い事ではないかもしれないという事です。

昔から苦労は買ってでもしろと言います。苦労を乗り越えると新しい人生が開けます。乗り超えずに苦労から逃げてしまうと、その人はいつまでも成長出来ません。人間として成長するためには、苦労が必須です。何か苦労に出会ったら、これを乗り越えると自分は成長できる、これで自分は成長するのだと考えて、努力して下さい。

親はとかく子供に苦労をさせたくないと考えますが、それは大きな間違いです。子供には苦労をさせましょう。若いときほど良いです。

私の座右の銘は、小学校卒業の頃は、「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」でした。

その後、転職した頃は、幸運の女神に後ろ髪はないです。これはご存知ですか?幸運は来た時にしっかりつかまないと、過ぎた後を追いかけようとしても、後ろ髪がないので、引き止められないという事です。幸運をつかむ勇気、新しい事に飛び込む勇気です。

現在、思うのは、人生万事塞翁が馬です。人生だけでなく、会社も、国もそうだと最近特に思います。

配布資料の最後の蛇足は、今日のお話にはないけど、皆さんに知っておいて頂きたい私の経験のエッセンスです。