検察の証拠偽造と日本社会 

2010年9月21日三原翠

村木元局長の冤罪事件に関し、検察がFDの情報を勝手に改竄したという事が報道されています。
なんと言う事と皆、驚いていますが、20年近く前の事を思い出しました。

47歳で初めて民間会社に入り、民間会社の中の、見ると聞くでは大違いを知った事です。
私の入った会社は、一応外資系だったので、多分、日本の会社より随分ましだったのだろうと思いますが、閉鎖的で、企業の常識は、世間の非常識のような世界でした。製造業だったので、なおさら古かったのでしょう。

仕事以外の事で、ごく日常の事をあげつらって,上司が部下をいじめるのは、よくある事で、それを周りの人は何も出来ずに見ているだけ。今で言う、パワハラがまかり通っていました。
パワハラがまかり通るという事は、不正であっても何でも、上司が黒を白と言ったら、白といわなくてはならない雰囲気です。個人的な事を言い募っていじめている部長を見ていて、何故ここまで言われて黙っているのだろうと私には不思議でした。なんと男は、我慢強いのだろうと!

つまり、今回の検察の上司が証拠を捏造しても、誰もとがめないのは同じ構造なのだろうと思いました。上司には逆らわない、皆、同じ泥舟に乗っているから。いや、泥舟だなんて誰も思っていません。大型客船だと思っているのです。タイタニックかもしれないのに。

当時、私は会社の中は多かれ少なかれ、上司が全ての世界であると想像できたので、企業の経験のない友人達に言ったものです。
「会社の中は、凄まじいところよ。殺人以外の何でも出来る所よ。殺人だけは司直の手にゆだねる事になるでしょうが。」と。
最も後で、ある人は言っていました。「いや、殺人だってやるよ。」と

会社の業績を上げるためには、なんでもする。家族を養っていくためには、なんでも我慢する男達。
この組み合わせで、企業はいくらでも暴走出来たのです。

最近の企業は、CSR(企業の社会的責任)が要求されたり、何かというと悪事、インターネットで千里を走る社会になったので、その様な事はもうなくなっているかと思いましたが、思いがけず、公務員、いや検事の世界では残っていたようです。

研究公務員だった私には、男女も年齢も平等、言いたい事を言え、科学の前では誰も同じ世界だったので、こういう世界もある事を知りませんでしたが、何かにつけ、民間より公務員の方が遅れていることを考えれば、まだ残っていても不思議ではありません。

それにしても冤罪で、刑務所に入れられたり、中には死刑になった人もいるだろうと思うと許せません。
でも同じような状況が、どこかにあったと思いませんか。
それは、戦前の日本の軍隊です。どのような無茶もまかり通っていたあの軍隊の組織は、戦後会社が行政の組織の中に続いていたのではないかというのが私の思いです。