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自然放射能と人工放射能−カリウムとセシウムの違いを考える

放射能汚染の問題が話題になるとき、よく言われているのが、自然にも放射能は結構あるのだよという事です。
特に、今回のフクシマ原発事故以来、よく聞くのが、セシウムはカリウムと同じような性質があり、自然にもカリウム40は放射線を出しているのだから、心配し過ぎる事はないという話です。
具体的には、カリウム40は、白米1kg中に33ベクレル、海水1リッター中、12.1ベクレル、体重60kgの成人男子で、4000ベクレルの体内放射能があるという。これは0.17ミリシーベルトmSvとなるそうです。生物学的半減期は30日と言われています。ちなみに、物理的半減期は12億年以上です。46億年前の地球創世記には、現在の12倍のカリウム40があったそうです。

では、セシウムとカリウムは、同じなのでしょうか。
物理的というより、放射線を出す物質の視点では、確かに同じです。カリウム40の10ベクレルとセシウムの10ベクレルは、同じ1秒間に10個壊れる意味です。
しかし、化学的、生物的相違は、どうでしょうか。それを知るための手掛かりとして、周期律表の同じグループ・アルカリ金属類の物理的性質を比較してみました。

アルカリ金属類

名称 分子量 イオン化エネルギーKJ/mol 共有結合半径pm 電気陰性度
リチウム Li 7 513 134 0.97
ナトリウムNa 23 495 154 1.01
カリウム K 39 418 196 0.91
ルビジウムRb 85 403 211 0.89
セシウム Cs 133 375 225 0.86

ここに紹介してるイオン化エネルギー共有結合半径電気陰性度は、化学的、生物的性質を知るための一助になるのではないかと考えた性質を挙げてあります。

これらを見ると、セシウムとカリウムが、生体内で同じように反応するとは、とても思えません。単に同じアルカリ金属類であるからと言って、同じ体内動態を示すとはいえないのではと思われます。
例えば、ナトリウムとカリウムの生物的性質を比較してみると、体内で、カリウムは細胞内に存在し、ナトリウムは細胞外、血液や体液等に存在します。同じグループでも、生物的役割は、随分異なっています。
それなら当然、他のアルカリ金属類が、体内では、それぞれ異なる動態を示すであろうと考えられます。カリウムとセシウムが、同じグループだからといって、体内でも同じように行動するとは、限りません。

それを客観的に証明する資料が、マウスへの放射性セシウムを投与した結果で、心臓や腎臓に多く分布することがわかります。セシウムは筋肉に広く分布すると云われていますから、筋肉の塊のような心臓に多いのは、うなづけますし、水溶性物質の排泄器官である腎臓に多いのもうなづける結果です。
又、これらの結果は、チェルノブイリにおいて、心臓病や糖尿病等の腎臓関係の病気が多いと云われている事とも符合します。
更に今まで何回も引用していますが、ICRP Publication111の図2-2(21ページ)に示されている毎日10ベクレルでも1000日で1400ベクレル以上蓄積するというデーターです。  (三原翠,2012/01.01)