3月11日と私

三原翠(20110912)

あれから半年が過ぎました。

3月11日の夕方、テレビで原発の緊急冷却のための発電機が働かず、冷却が出来なくなっている事を聞いた時から始まった私の心配が、まるで誰かが、いじわるしてその心配を現実のものとしているように、事態が移っていきました。
12日にもろくに原発関係のニュースが出ない、それはチェルノブイリを意味するのではと、不安はどんどん大きくなりました。万一に備えて、デスクトップにあった情報を出来るだけノートPCに移し、必要最低限のものをまとめ始めたのは、2-3日後でした。

3月15日に富士山近くでのM6の地震、これは東海地震の前触れではと思いました。東北地震の時も2-3日前にM7があったとか聞いていました。

原発がどうなっているかわかないこの状況で、更に東海地震が起き、浜岡原発も爆発したら、東京にいたらどんな混乱になるか!私は気もそぞろになりました。

そうだ、神戸へ行こう。かつて単身赴任で5年半住んでいた懐かしい土地、16日にあわただしく職場に別れを告げ(もっとも3月一杯と言われていたので、半月早まっただけですが)、翌日には、新幹線に乗りました。皆、同じことを考えているのではと思ましたが、あっさり切符は買え、外人一家の姿が目立ちましたが、新幹線はすいていました。神戸は別天地でした。地震もなく放射能汚染もなく、人々は東北の事は全く他人事と考えているように見えました。水のペットがない点位が、放射能の影響でした。

全く落ち着いたそれでいて空きスペースがあるオフィス街を見て、きっとそのうち東日本から人が移ってきて、皆、ふさがるのではと言っていました。

1週間経っても東海地震が起こらなかったので、私は東京に戻って来ました。留守をしていたなんて、なかったような顔をして。ちょうどその間に、東京への放射能風の一番強いのが吹いた事が何か月も後になってわかりました。

しかし、私にとっての3.11は、もっと深く長く関係しています。

今まで、ほぼ40年間していた私の仕事、食の安全と環境問題、この2つとも放射能汚染と津波で吹っ飛んでしまいました。

初めて被災地宮城県を訪れたのは、5月の末でした。 それから6月、7月には岩手県も行きました。

どこでも見るのが、がれきの山と、家が残っている処では壊れたエアコン、自動車等々。

かつてモントリオール議定書が作成され、全世界がフロンの削減に取り組み、世界的な取り組みとして初めての成功例と言われたオゾン層保護。

それなのに、あの大津波はまるでそのような人間の細かな取り組みをあざ笑うかのように、夥しいエアコンからフロンを放出させたのです。環境負荷削減をあれこれ活動してきたのは何だったのだろうと愕然としました。尤も、省エネ活動は、実を結んでいると言えるのかもしれませんが。

食の安全に関しては、もう添加物も残留農薬も問題ではないという感じです。どれだけの放射能があるのか、半年も過ぎたこれからは、内部被曝が何より問題です。
小さなお子さんのいる家では、お母さんとお父さんで放射能への恐れ方が異なり、けんかが絶えないという話もあります。東京でも小さなお子さんがいる家庭は、逃げている方も結構おられるようです。でも、なにより心配なのが、高放射線量に汚染されながら避難できていない福島市の子供達です。

チェルノブイリの経験からも20年後の被曝の影響は、内部被曝が70-80%と言っています。外部被曝だけでなく(現在汚染除去が話題になっていますが)、なにより子供達の内部被曝を避ける手だてが必要です。

今までの食の安全は、誰でも一律の安全基準でした。 しかし、放射能の影響は、子供や若い女性にとって、大きいもので、年令による影響の差を考慮した対策が必要です。勿論、皆が汚染されたものを食べないでいられるのなら、それに越したことはありません。 東日本の皆が、西日本や輸入食品を食べて、これから何十年も過ごせるのなら、今までのような一律基準でよいでしょう。

それはとても不可能な話です。東日本の農業、畜産業を全滅させるわけにはいきません。 高濃度汚染でないなら、生産し、食べていく事が必要です。

放射能の影響は、すぐ白血病や癌を思い浮かべますが、実際は、加齢です。

大きな災害が、過疎化や老齢者問題を浮き掘りにするように、放射能も時間を早めて一人一人に対応していくのです。ウクライナでは子供に成人病のような症状(心疾患や脳血管疾患、糖尿病等)が出ているそうです。ウクライナでは大人の6割がこのようななんらかの疾患にかかているとの事。

確かに癌も加齢現象の一つであり、加齢現象の一つである白内障が紫外線の影響である事はよく知られています。

放射線の影響が加齢であるなら、これが放射線の影響と証明出来ない可能性を感じます。

オゾン層が破壊され有害紫外線が増加すれば、多くの生物が生きられなくなる事を考えても、人工放射線の増加は、地球上の生物の生存を脅かしていると言えます。温暖化ばかりでなく人工放射線が地球に悪をなしているのなら、原発によって温暖化を防止しようというのは、とんだお笑い草です。

昔、チェルノブイリが起こったとき、ああ、人間は核兵器でなく原発が原因で滅んでいくのではないかと思いましたが、爆発しなくても、地球上に放射性物質をたくさん作りだしたり掘り出したりすることでも、人間は地球上の生物を滅ぼしだしていると言えるのではないでしょうか。人間はなんと業のふかいものとつくづく思います。

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