岩上安身の米韓FTA要旨
米韓FTAの実態① 畜産業の壊滅
韓国が現在かけている牛肉の関税40%が15年で、豚肉の関税25%が10年で撤廃される。韓国の畜産は、日本と違い、例えば松坂牛のようなブランドの競争力が無い。そのため、関税が無くなると致命的なダメージを受ける。
米韓FTAの実態② 医薬品問題
医薬品問題。韓国側がジェネリック医薬品を作る際、必ず医薬品メーカーに申告しなければならない。申告を受けたアメリカの医薬品メーカーが、もし、これを利益侵害と認定すれば、即刻提訴出来る。また、訴訟が行われている間は、ジェネリック医薬品を使用出来ず、高額なアメリカの医薬品を使用しなければならない。
米韓FTAの実態③ 国境を越えたサービス貿易に関する規定
韓国の郵便事業者(韓国ポスト)の独占的な事業拡大をー切許さず、民間事業者と同一のルールを適用する。また、韓国の保険会社に、競争上の優位を与えてはいけない、という規定もある。韓国ポストは,財務諸表の提出も義務づけられている。さらに、農業協同組合、水産協同組合の保険事業も、3年以内に、金融監督委員会の規制のもとにおかれる。
米韓FTAの実態④知的財産権を米国が直接規制
権利者からの直接の申し立てが無くても、著作権侵害だと「関係者」が判断すれば、その職権で、刑事上の手続きを取ることが出来る。
すなわち、作曲家や映画監督といったクリエイターが申し立てなくても、所属事務所やレコード会社の判断で、刑事訴訟をおこせる、ということ。
米韓FTAの実態⑤ ISD条項
米国資本が、利潤確保の妨げになる韓国政府の法律と制度を、国際機構に提訴することが可能になる。アメリカ系企業による韓国地方自治体への提訴が増えると予想され、敗訴した場合、莫大な金銭的被害を自治体が受ける可能性が高い。例えば、NAFTAでのISD条項紛争では、アメリカ企業により、カナダ、メキシコ政府が次々に訴えられており、そのなかで米国が負けた事例は一件もない。
米韓FTAの実態⑥ サービス市場のネガティブ方式開放
基本的に、サービス市場を全面的に開放することを前提に、例外的に禁止する品目だけを明記する。明記されなかった品目は、自動的に、全面開放されることになる。
米韓FTAの実態⑦ 未来最恵国待遇(Future most-favored-nation treatment)
今後、韓国が、他の国とFTAを締結し、米韓FTAより高い水準での市場開放をした場合、米国にも同じ条件を適用しなければならない。
米韓FTAの実態⑧ 逆進防止条項(ラチェット条項)
一度規制を緩和すると、どんな事態があってもそれを元に戻すことは出来ない。
例えば、米国産牛肉で狂牛病が発生したとしても、牛肉の輸入を中断することが出来ない。
米韓FTAの実態⑨ 非違反提訴(Non-Violation Complaint)
米国企業が利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに国際機関に対して韓国政府を提訴出来る。
たとえ自由な企業間競争で米国企業が負けたとしても、負けたのは韓国側の規制のせいだと訴えられる。
米韓FTAの実態⑩ Snap-Back
自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米国企業が判断した場合、米国の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効に出来る。
米韓FTAの実態⑪ 政府の立証責任
国家がかける規制が必要不可欠であることを、国家が科学的に立証しなければならない、という条項。
韓国政府が規制の必要性を立証出来ない場合、市場開放のための追加措置を取らなければならない。
米韓FTAの実態⑫ サービス非設立権の認定
弁護士をはじめ、あらゆる米国の業者が、韓国国内に事業所を設けなくても、営利活動を行っていい、というもの。事業所が韓国国内にないので、業者が違法行為を行っても、米国内に帰ってしまえば罪に問うことが出来ない。いわば、米国の企業活動の治外法権化とでもいうもの。 |