ISO14001:2004規格と説明


目次

序文
1.適用範囲
2.引用規格
3.用語及び定義
4.環境マネジメントシステム要求事項
4.1 一般要求事項
4.2 環境方針
4.3 計画
4.4 実施及び運用
4.4.1 資源、役割、責任及び権限
4.4.2 力量、教育訓練及び自覚
4.4.3 コミュニケーション
4,4,4 文書類
4.4.5 文書管理
4.4.6 運用管理
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
4.5 点検
4.5.1 監視及び測定
4.5.2 順守評価
4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置
4.5.4 記録の管理
4.5.5 内部監査
4.6 マネジメントレビュー

はじめに:以下の内容は規格の条文そのものではなく(引用した部分もあるが)、ほとんど主観的に規格の内容を説明しています。
従って、規格の内容を正しく知りたい方は、原文にあたってください。

序文

ISOを知るためには、まずその規格の序文を読む事が大切です。
序文は要求事項ではないければ、規格を運営していく目標が、書かれています。

長文の条文の中で特に読んで欲しい部分をあげて、解説したい。

概要:

多くの組織は,自らの環境パフォーマンスを評価するために環境上の“レビュー”又は“監査”を実施している.しかしながら,これらの“レビュー”及び“監査”を行っているだけでは,組織のパフォーマンスが法律上及び方針上の要求事項を満たし,かつ,将来も満たし続けることを保証するのに十分ではないかもしれない.これらを効果的なものとするためには,組織に組み込まれた体系化されたマネジメントシステムの中で実施(し,全経営活動と統合したものに)する必要がある.

 環境マネジメントに関する規格には,他の経営上の要求事項と統合でき、組織の環境上及び経済上の目標達成を助けることができる(支援するために,他の管理要求事項と統合し得るような)効果的な環境マネジメントシステムの諸要素を組織に提供する意図がある.他の規格と同様に,これらの規格は,非関税貿易障壁を生みだすため,又は組織の法的な義務を増大若しくは変更するために用いられることを意図したものではない. 

この規格は,組織が、法的要求事項及び著しい環境側面についての情報を考慮にいれた方針及び目的を設定し、実施することができるように、環境マネジメントシステムのための要求事項を規定している.この規格は,あらゆる種類・規模の組織に適用し,しかも様々な地理的,文化的及び社会的条件に適応するように意図されている.そのアプローチの基本を,図1に示す.このシステムの成功は,組織のすべての階層及び部門のコミットメント,特にトップマネジメントのコミットメントのいかんにかかっている.この種のシステムは,組織が環境方針を策定し,方針におけるコミットメントを達成するための目的及びプロセスを設定し、パフォーマンスを改善するために必要な処置をとり、システムがこの規格の要求事項に適合していることを実証することができるようになっている。この規格の全体的なねらいは,社会経済的ニーズとのバランスをとりながら環境保全及び汚染の予防を支えることである.要求事項の多くは、同時に対処でき、いつでも再検討できることに留意するとよい。

説明:
上記文中、かっこ( )で囲われた内容は、1996年版で書いてあったが、今回変更されている部分で、私としては、残念な変更部分で、残しておいて欲しかったと考えています。なぜなら、環境マネジメントシステムは、単に環境問題をどうこうするだけでなく、経営マネジメントとしても十分活用できるのではと考えているからです。全経営活動との統合を2004年版でも、ぜひ実施していただきたいです。

引き続いて全文を読まれる事を願います。

1.適用範囲

概要:ここでは特定の環境パフォーマンスには言及しないと事わている点は1996年版と同じだが、規格との適合の方法について言及で、自己宣言がはじめにきて、次が二者監査、第三者による認証登録が、最後になている点が、2004年版の特徴である。
認証登録の弊害が言われるようになり、適切でない審査がある状況が、このような変更をもたらしたのではと思われる。自己宣言も経営者の独善に陥らないような歯止めがないとその正当性に危うさを感じるのは、私だけではないだろうと思う。

実務的には、適用の範囲に「組織が機能する立地及び条件のような要因」が加えられ、適用の範囲は、組織の環境方針、その活動、製品及びサービスの性質、並びに組織が機能する立地及び条件のような要因に依存する。
となっている。
このため、適用範囲の表現の一つに、適用場所の住所が書かれるようになった。

2.引用規格  なし

3.用語及び定期

ここでは特に重要と考える用語のみ説明します。

環境側面 環境と相互に影響しうる、組織の活動、製品及びサービスの要素 組織が環境へ影響を与える可能性のある活動を側面と言い、ボイラーを焚けば大気汚染をおこすので、ボイラーの使用が側面になります。1996年版までは負荷のみを取り上げる事が多かったですが、これからはプラスの面、経営効率化や将来プラン等も取上げると活動が本来業務に結びつきやすくなります。
環境影響 有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の活動、製品又はサービスから生じる、環境に対するあらゆる変化 側面が原因で、影響は結果です。即ちボイラー使用の環境側面の環境影響は、大気汚染、温暖化等になります。植林という環境側面は、炭酸ガスの吸収という良い影響をもちます。本来業務では、効率化による活動時間の削減は、エネルギー等の削減につながり、規模の拡大は、単位当たりの製造負荷の削減になります。同じ器なら、他社の効率の悪さを良い者が凌駕したとも考えられ、地球的にはよいのではと考えることも出来ます。(異論のあるところでしょうが)
継続的改善 組織の環境方針にそって全体的な環境パフォーマンスの改善を達成するための環境マネジメントシステムを向上させるプロセス ISO140001では環境パフォーマンス(負荷削減等の成果、結果)を要求しませんが、継続的改善は要求しています。即ちマネジメントシステムP-D-C-Aを回す事で、毎年活動が改善され、環境負荷が削減されていくことを要求しています。パフォーマンスが悪い場合は、このPDCAの仕組みのどこかに問題があると考えます。
利害関係者 組織の環境パフォーマンスに関心を持つか又はその影響を受ける個人又は団体 直接の取引先、顧客、消費者、地域住民のように直接関係する人々だけでなく、環境マネジメントシステムでは、地球上の人々全てが関係者となります。近い将来は生態系すべてにまで広がるかもしれません。
監査員 監査を行う力量をもった人。 力量とは単に講習を受講したとか、資格を取ったということでなく、それなりの実行が出来る事で、1度見習いで監査をし、次回はその内容で正式な監査員にすると力量が確認出来る。
修正 規格には説明なし 不適合の状態を適合の状態に戻す或いは直す処置。従来の是正は、このレベルが多かった。
是正処置 検出された不適合の原因を除去するための処置。 不適合の原因を突き止め、同じ事が再発しないように防止策をたてる事。出来れば仕組みとして是正処置ができればベストである。処置後、その有効性をレビューする必要がある。
予防処置 起こり得る不適合の原因を除去するための処置 予防処置はまだ、発生していない不適合を予想して原因を除去する処置であるが、同時に起こった不適合の是正処置をした後に、同じような状況が他にもないか探して、ある場合にとる水平展開も含まれる。

4.環境マネジメントシステム要求事項

4.1一般要求事項

組織は、
この規格の要求事項に従って環境マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善し、どのようにしてこれらの要求事項を満たすかを決定すること。
組織は、その環境マネジメントシステムの適用範囲を定め、文書化する事。

環境マネジメントシステムを導入する組織は、以下の要求事項をすべて構築して、実施し続ける事が必要である。なお、04年の改訂では、適用範囲を明確にする事が追加された。

4.2 環境方針

トップマネジメントは、組織の環境方針を定め、環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で、環境方針が次の事項を満たすことを確実にすること。

a)組織の活動、製品又はサービス、性質、規模や環境影響に対して適切である。

b)継続的改善や汚染の予防に関するコミットメントを含む。

c)組織の環境側面に関連する適用可能な法的要求事項や組織が同意するその他の要求事項を順守するコミットメントを含む。

d)環境目的及び目標を設定し、レビューのための枠組みを与える。

e)文書化され実行され、維持される。

f) 組織で働く又は組織のために働くすべての人に周知される。


g)一般の人々が入手可能である。

最高経営層は、工場の場合は工場長、会社の場合は社長、自治体の場合はその長となる人が、なり、その組織の環境方針を定める。その内容には以下の項目を実行する事を約束する事が必要。方針は、自分の組織に適合したものを思いを込めて作成するのが理想であるが、多くは、どこにでも通用しそうなものを掲げているところがよくある。この方針の内容を見るだけでも、その経営者が、どのような気持ちで環境マネジメントシステムに取り組もうとしているかがわかる。

a)その組織の活動(工場なら製造工程)、製品とサービス(輸送・消毒・配送・派遣等)及び組織の性質や規模、環境影響に対して適切である事。事業内容の説明や規模なども入れるとよい。
b)マネジメントシステムを構築する事で継続的に改善を進めるという約束及び環境汚染を起こさない或いは最小限にするよう努力する旨の約束をする事。コミットメントは誓約と訳すのがよく、単なる約束でなく誓っている気持ちを持ってほしい。
c)ここは96年版とは異なり、関係する環境法規制だけでなく、環境側面に関係する法律をすべて、順守し、法規制以外に順守を約束している協定等があればそれも含めて順守する事を誓約する事を要求している。
d)ここではいわゆるマネジメントシステムを実行する事を言っている。
e)環境方針を文書にして、方針を実行し、その実行を継続する事を要求している。
f)ここは96年版の全従業員だけでなく、組織のために働くすべての人々と広くとらえている。これは社員や従業員でなくとも、常駐している人は、すべて対象になる。環境方針をよく理解させるような手立てを行う事。例えば教育をしたり、掲示をしたり、カードにして携帯させる等の手立てをして周知させること。
g)
誰でもが方針を知りたいと要請した時、要望をかなえられるようにしておく事。HP上への公開が一番手軽で確実であろう。

4.3 計画

4.3.1 環境側面


組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。

a)環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で、活動、製品及びサービスについて組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面を特定する。その際には、計画された若しくは新規の開発、又は新規の若しくは変更された活動、製品及びサービスも考慮に入れる。


b)環境に著しい影響を与える又は与える可能性のある側面(すなわち著しい環境側面)を決定する。

組織は、この情報を文書化し、常に最新のものにしておくこと。

組織は、その
環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、著しい環境側面を確実に考慮に入れること。

環境側面の調査は、いわば環境における現状把握の役割を持っているもので、更にその内容を格付けし、著しい側面を明確にすることで、環境の現状を定量的につかまえようとしている。この側面調査の方法は特に指定されえいるわけではないので、組織でよいと思う方法を行うと良い。実際に見ているとあまりに細かすぎるのが多く、これが実際にどれだけ役立っているのか不審になるケースもある。実際に役立つ側面調査が行うとよい。特に、最後に著しい側面を全体としてまとめ、その順位を定めて、取り組むべき課題を浮き彫りにする事。その時、自分達の環境負荷の常識と外れていないかも検討するとよい。あれこれルールをもっともらしく作っても、本当に現状を反映しているとは限らない。かえって細かく見すぎて、全体が見えていない場合もあり、自分達の組織として、何が著しい側面かを、合理的に調査して欲しい。また、全く異なる環境影響評価の比較は、ときには金額で換算して比較すると、「負荷が見える」ことがある。金額は、人件費を除けば、環境負荷を表している事が多い。

環境にプラスになる側面も評価する。この場合、自社の本来業務を側面にし、負荷とは異なる見方での評価をするとよい。例えば、利害関係者の要望や経営に役立つ事などを評価の項目にしてもよい。プラスの評価は、組織ごとに、その組織の活動の内容から変わってくる可能性が大きい。
文中、維持する事が何度も出てくるし、今後も出てくるが、維持とはキープではなくメインテインである。即ち、メンテナンスの語に表われるように、悪いところがあれば訂正し、常に最善の状態をキープさせていくことが維持である。

4.3.2法的及びその他の要求事項

組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。
a)組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
b)これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかを決定する。

組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。

組織は自らの活動・製品・サービスの環境側面に関係するすべての法規制や約束事を調べていつでも見れるように作成しておく手順を作り、それを実施すべきである。ここで法規制は環境関連のものだけでなく、自社の環境側面に関わるものはすべてという事になっている(2004年版での変更事項)。法規制をリスト化しておくのが最も一般的である。その中で自らが該当するかしないか、該当するとしたら義務の項目はなにかを明らかにし、順守評価につなげていくとよい。また、義務ではないが事業者としての責務の場合もある。責務をどれだけ果たすかが、その組織の質を表すことにもなろう。また、関連しそうなものを出来るだけリスト化しておくと、現在は該当しなくても該当するようになった時にもれる可能性が少ない。新しい法規を登録すべきかどうかの判断は、漏れを起こさない為に、事務局だけで判断するのではなく、決定を委員会等で行う方が良い。

また、これら要求事項を確実に実行できるようにし、環境側面との関係を明らかにして、目標にもっていって継続的に改善するか、運用管理で行うかを明確にすること。

4.3.3目的及び目標及び実施計画

組織は、組織内の関連する各部門及び階層で、文書化された環境目的及び目標を設定し、実施し、維持すること

目的及び目標は、実施できる場合には測定可能であること、そして、汚染の予防、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守並びに継続的改善に関するコミットメントを含めて、環境方針に整合していること。

その目的及び目標を設定しレビューするにあたって、組織は、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項並びに著しい環境側面を考慮に入れること。また、技術上の選択肢、財政上、運用上及び事業上の要求事項、並びに利害関係者の見解も考慮すること

組織は、その目的及び目標を達成するための実施計画を策定し、実施し、維持すること。実施計画は次の事項を含むこと

a)組織の関連する部門及び階層における、目的及び目標を達成するための責任の明示

b)目的及び目標を達成のための手段及び日程

組織は環境目的・目標を文書化して設定しなくてはならないが、その目的・目標は、その組織内の各部門毎にも定められていなくてはならない。規定の文章からは下から上への目的・目標の設定でもよいような表現であるが、階層で設定するよう求めている事、或いは方針との整合性を求めている事から、上層部の目的・目標の設定を各部門に下ろしていくやり方が適当である。

目標は出来るだけ数値化して、定量的に把握し、達成・未達成が明確にわかるようにすべきである。数値化が難しいものでも、行動を数値化する工夫をする事で、多くの場合設定できる。

目的の設定及び見直しにあたっては、法規制等その他要求事項、著しい環境側面、技術上可能なもの、財政的に可能なもの、或いは運用上・事業上の必要性や利害関係者の関心に配慮しなければならない。特に見直しの場合は、前の設定時からの法規制の変更点や方向性の変化を十分考慮して見直す事が必要である。また、著しい環境影響を緩和できる技術の進歩、その経済的な裏付け、今後の事業の方向性、そして利害関係者や社会情勢の変化を見据えて見直す事が大事である。

目的及び目標の方針への整合性は、単なる字句の問題でなく、その心を整合させる事である。

設定された目的・目標を達成するために、組織は実施計画を作り、実施していかなくてはならない。実施計画は各目的・目標毎に作成される必要があり、さらに確実な実行のため、責任者の明示、どのような手段で行うか、そして具体的な日程が必要である。目標の場合は手段・日程はそれほど難しくないが、目的の場合はそのような具体的な実施計画の作成は難しい場合は、各年の値の設定が出来ていれば良しとする事もある。
多くの実施計画でよく見るのが、施策が不十分だったり、同じものがいつまでも続いていたりする例である。施策が思いつかない場合は、それを目標にする事が適切であるかどうかも考えるべきだったり、トップが資金の提供をする必要があったりする。

4.4実施及び運用

4.4.1資源、役割、責任及び権限

経営層は、環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、改善するために不可欠な資源を確実に利用できるようにすること、資源には、人的資源および専門的な技能、組織のインフラストラクチャー、技術、並びに資金を含む。

効果的な環境マネジメントを実施するために、役割、責任及び権限を定め、文書化し、かつ、周知すること。

組織のトップマネジメントは、特定の管理責任者〔複数も可〕を任命すること。その管理責任者は、次の事項に関する定められた役割、責任及び権限を、他の責任にかかわりなくもつこと

a)この規格の要求事項に従って、環境マネジメントシステムが確立され、実施され、維持されることを確実にする

b)改善のための提案を含め、レビューのために、トップマネジメントに対し環境マネジメントシステムのパフォーマンスを報告する

この項はシステムを確実に実行するための要の部分である。各人の責任・役割・権限を明らかにして、文書化しかつ組織内に伝達することが必要とされている。伝達の方法については言及していないが、マニュアルへの記載及び掲示等が多い。

経営者の役割責任として、このシステムを実行し続けていくために、必要な経済的・人的・技術的資源を用意することを定めている。しかし、実際には、品質の9000とは異なり、環境問題はトップの意識がまだまだ切実でないところがあり、経済的、人的資源の提供の仕方に問題があると事は結構ある。最近はそれほどでもないが、他の仕事が苦手な人が環境問題をやっている場合があるが、環境問題は、他の仕事も出来る人がしないと形だけになってしまう可能性がある。問題点が何か、どこに問題があるか、積極的に探せる或いは他の人を積極的にさせられる人が、必要である。環境も問題は、経営問題に直結している事を、トップは認識してほしい。言われたことはしっかり出来るだけの人は、環境問題には向かない。

また、経営者は自分ではシステムを運営していくことは難しいので、環境管理責任者を任命して、他の責任にかかわりなくその者に責任と権限を与えなくてはいけない。他の責任とは、通常の業務における立場のことで、トップに次ぐ人が環境管理責任者になっている場合は問題ないが、下の人がなっている場合において、環境管理責任に関しては、トップの代理である責任と権限が与えられる事を言う。規模が小さい組織では、勿論、経営者が環境管理責任者になってよい。

a)環境管理責任者は規格に従って、要求事項を満たしたシステムを構築し、自らの決めた事柄を実行し続けていく事が義務であり、確実な実施を求められている。

 b)環境管理責任者は自らを任命した経営者に、この環境マネジメントシステムの実施状況、実績、改善の提案等を、報告しなくてはいけない。それらの報告は経営層による見直しの基礎資料として、あるいはシステムの改善の資料となるようにしなくてはいけない。改善の提案は2004年版からの新規で、唯、漫然とした報告ではいけないことを定めている。環境管理責任者は、トップからの委嘱を受け身で行うのではなく、主体的にトップに代わって環境マネジメントを進めていくことが要求されている。

4.4.2 力量、教育訓練及び自覚

組織は、組織によって特定された著しい環境影響の原因となる可能性を持つ作業を組織で実施する又は組織のために実施するすべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にすること。また、これに伴う記録を保持すること

組織は、その環境側面及び環境マネジメントシステムに伴う教育訓練のニーズを明確にすること。組織は、そのようなニーズを満たすために、教育訓練を提供するか、又はその他の処置をとること。また、これに伴う記録を保持すること。

組織は、組織で働く又は組織のために働く人々に、次の事項を自覚させるための手順を確立し、実施し、維持すること

a)環境方針及び手順並びに環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性

b)自分の仕事に伴う著しい環境側面及び関係する顕在又は潜在の環境影響、並びに各人の作業改善による環境上の利点

c) 環境マネジメントシステムの要求事項との適合を達成するための役割及び責任

d)規定された手順から逸脱した際に予想される結果。

組織は従業員が正しくマネジメントシステムに関わっていけるように教育訓練の計画をたて、実施しなければならない。(これが確実にする事の中身になる)。特に環境に著しい影響を与る可能性のある作業を行うすべての従業員には適切な訓練をしなくてはいけない。訓練は当該手順に基づき、その内容の理解と実行になる。したがって著しい側面として登録されている事柄でもその実行に手順書の必要がないような場合は、この訓練の必要性もない。

また、組織は関連するすべての従業員(正式な雇用か否かに関わらず)に対し、次の事項をわからせる手順を作成して実施し継続しなくてはならない。

a)環境マネジメントシステムで指示している事柄を実行する事の重要性を話す。それには環境方針の理解や手順の理解と実行等が含まれる。

b)組織内での事業活動による明らかに大きい環境影響をもたらすものや、普通はさほど影響が大きくないが何かあると大きい環境影響を与えそうなものについての説明をし、また、各人の作業の環境へ与える影響を知り、その作業を改善することで環境負荷を低減できる可能性についての教育

c) 各人の環境マネジメントシステムの中での役割と責任を明らかにしてた教育をする。具体的には環境方針、目的目標等に沿って事業活動を行う事、手順を順守し緊急事態へすぐに対応がとれるようにする事等。

d)決められた手順に従わなかった場合、どのように環境へ影響を与えるかの予想についての教育

環境活動の場合、このような教育に加え、従業員の意識を環境負荷削減に向け、その努力をする事は誇りある仕事である事をわからせる事が大事である。言われたからやるのではなく、地球のため、社会のため人のため家族のため、そして自分のために負荷削減を心がける事がわかると、いろいろな気づき点が出てきたり、仕事に誇りが持てるようになったりして、ひいては会社の発展につながっていく可能性がある。

そのためにも、次項のコミュニケーションを良くして、現場の声が届く仕組みが必要である。

4.4.3コミュニケーション

組織は、環境側面及び環境マネジメントシステムに関して次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。

a)組織の種々の階層及び部門間での内部コミュニケーション

b)外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションについて受付け、文書化し、対応すること。

組織は、著しい環境側面について外部コミュニケーションを行うかどうかを決定し、その決定を文書化する。外部コミュニケーションを行うと決定した場合は、この外部コミュニケーションの方法を確立し、実施すること。

組織は環境側面についての情報、環境マネジメントシステムに関しての情報を透明化するために次の項目についての手順を作成して、継続的に実行し続けること。

a)組織内部での各上下間でのコミュニケーションの手順。コミュニケーションとは情報の両方向の伝達を言い、片方からの伝達だけでない事に注意。(上記で述べた現場の声の届く仕組みは、提案箱や提案活動等もそのひとつである。現在はメールを入れた仕組みもよいであろう。)

b)外部からの情報についても情報を記録してその対応をしてそれらも記録する事。

内部外部のコミュニケーションで最も大事なことの一つに、発信者に対する素早い応対と誠実な対応が、大切である。すぐに答えられない場合はその旨を連絡し(特に外部の場合)、その返事を後日行う旨を約束し、実施する。
内部コミュニケーションで、出会った感心した例に、パートの人の提案であっても、皆、役員が目を通し、返事をするというケースがあった。ここのパートさんはさぞかし、毎日やる気になって、問題点を考えながら仕事をしているのだろうと想像できた。その会社は同業他社の凋落を尻目に、一人元気な会社である。

組織はまた、自らの著しい環境側面について、外部に対する伝達をどうするかを予め検討しておき、その決定事項を記録しておかなくてはならない。公表する事を決定した場合、どのような方法でその内容を決定しどのような手段で公表するかを決めておかなければならない。

このように定められているが、現実問題として日本では、何か問題が起こった時、出来るだけ情報を開示する事は、組織に求められており、ここでは、緊急事態のマネジメント版を考えておくとよい。何事も訓練をしておく事で、いざとなった時に、余裕をもって対処できる。

4.4.4 文書類

環境マネジメントシステム文書には、次の事項を含めること。

a)    環境方針、目的及び目標

b)  環境マネジメントシステムの適用範囲の記述

c)    環境マネジメントシステムの主要な要素、それらの相互作用の記述、並びに関係する文書の参照

d)    この規格が要求する、記録を含む文書

e) 著しい環境側面に関係するプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために、組織が必要と決定した、記録を含む文書

ここでは文書(記録を含む)にはどのようなものがあるかを列挙し、旧版より分かりやすくなっている。

環境マネジメントマニュアルについての記述はないが、c)が実質的にマニュアルを意味するものと思われる。少なくともマニュアルを作成すればカバーできる。 (従来は記録は文書の範疇に入っていなかったが、04年より記録も文書の一つとなる)

4.4.5 文書管理

環境マネジメントシステム及びこの規格で必要とされる文書は管理すること。記録は文書の一種ではあるが、4.5.4.に規定する要求事項に従って管理すること。

組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること

a)発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する

b)文書をレビューする。また、必要に応じて更新し再承認する。

c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。

d)該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。

e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする

f) 環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配布が管理されていることを確実にする。

e)廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする

ここではこの規格に関係する文書の管理の手順を作成し、実行し、必要があれば改定し続けていく事を要求している。

文書は読みやすく日付があり、責任者が明示され、わかりやすく整理されて、決められた期間保持されている必要がある。

a) 関連する文書(以下管理文書という)の相互関係が誰にでも分るようにする事で、文書一覧を作るとよい。

b) 管理文書は見直しをする事が必要で(04年より定期的でなくてよい)、新規作成と同じように決められた責任者によって内容が承認され、日付が付されている必要がある。改訂履歴を付している例が多いが、マニュアル以外の下位規程にまですべて付けるのは、煩雑で文書量がふえるので、規格が要求している手順があれば,改訂日付と改版数があれば十分と思う。

c) 管理文書は必要な場所で必要な時に最新版が使用できるようにしておく事が必要である。

d)外部文書も内部文書と同じように配布管理を要求している。外部文書とは、外部の文書であって、組織内においてそのまま使用するもので、機械の手順書とか法規制等を言う(自分達で書きなおして使用する場合は、内部文書となる)。また、認定の登録証も外部文書の1種である。


e)改訂した後の廃止文書は、確実にすべての部署から撤去するか、あるいは明らかに廃止文書であることが分るようにして、誤用を防ぐこと。電子化している場合は廃止文書のフォルダを設け,通常はアクセスできないようにしておくとよい。

4.4.6運用管理

組織は、次に示すことによって、個々の条件の下で確実に運用が行われるように、その環境方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用を明確にし計画すること。

a)文書化された手順がないと環境方針並びに目的及び目標から逸脱するかもしれない状況を管理するために、文書化された手順を確立し、実施し、維持する。

b)その手順には運用基準を明記する。

c)組織が用いる物品及びサービスの特定された著しい環境側面に関する手順を確立し、実施し、維持すること、並びに請負者を含めて、供給者に適用可能な手順及び要求事項を伝達する

組織は著しい環境側面に関わる活動や、環境目的・目標を達成するための活動、法規制順守のための活動等、に関する運用手順書を作成して、活動が確実にシステムの考え方に沿って実施されるようにしなくてはいけない。その作成にあたっては以下の事を考慮し確実に実施し、維持すること。

a)手順がないと環境方針・目的・目標に合わなくなる可能性のある活動に適用する文書化した手順を作成すること。(手順は必ずしも文章である必要はなく、わかりやすいフローチャートや図、写真でも良い。手順があると、誰でも間違えずに、しかも考えなくて動作が出来るのでよい。)

b)運用手順には必ず運用基準を書くこと基準がないと適切な運用がなされているかどうか客観的に確認出来ない。

 c)組織が使用している物品の製造等やサービスのうちで特定できる著しい環境側面に関しても環境負荷を低減させるのに有効な運用手順を作成して伝達したり、その旨を要求することも必要である。自らが直接関与していなくても、間接的に関与している活動に関しても、直接の関与と同じように、環境負荷低減のための活動が必要である。特にOEMのように完全に自らの活動の代理の場合は、その製造段階での運用手順の提供が必要に応じてなされること。また、環境負荷削減のための努力が常になされるよう、コミュニケーションを良くするとよい。

これは環境マネジメントシステムであるので環境と限定して書かれているが、この仕組みを経営に活かす場合は、すべての作業を手順を作成して記録を残す事をするとよい。それにより、誰がやってもある程度はその仕事がこなせるようになり、担当者がいないから出来ない、わからないといった対応をなくす事が出来、会社の信用を高める事が出来る。最近のように終身雇用でなくなれば、いつその担当者がいなくなるかもしれないという事を考えると、自分の仕事の手順を作成するのは、会社として当然要求すべきこととも考えられる。

4.4.7 緊急事態への準備及び対応

組織は、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及び事故を
特定するための、またそれらにどのようにして対応するかの手順を確立し、実施し、維持すること

組織は、顕在した緊急事態や事故に対応し、それらに伴う有害な環境影響を予防又は緩和すること。

組織は、緊急事態への準備及び対応の手順を定期的に、また特に事故または緊急事態の発生の後には、レビューし、必要に応じて改訂すること

組織は、また、実施可能な場合には、そのような手順を定期的にテストすること

組織は、なにがしかの事故や天災等で、環境に著しい影響を与える可能性があるものを、特定し、そのような事態に対応するための手順を作成し、維持していることが必要である。この手順には、緊急時の場合に環境影響を広げないため、あるいは生じた環境影響を減らすあるいは修復する内容を盛り込む必要がある。この手順は定期的に訓練(机上でなく実際に体を動かして行う事)して、問題点を検討したり、いざとなった時にあわてないために必要である。

組織は、事故や緊急事態が発生した場合には、その後それらを検証し、この手順を全面的に見直し、必要があれば改訂しなければならない。改訂の必要がない場合も、その検討結果を記録に残し、その理由を明確にした方が良い。

組織は緊急事態と決めた事柄について、その手順に従った訓練を可能な限り定期的に実施する必要がある。(現実には、形だけの緊急事態の設定と訓練が行われている事があり、折角のこの項を活かし切れていない場合が多い。)

ここでは環境に関わる緊急事態を述べているが、組織にとっての経営上の緊急事態に対しても、ここで述べられている考え方を取り入れて作成しておくとよい。コミュニケーションの項でも説明したが、トップマネジメントも組織の緊急事態への訓練をしておくとよい。それを発展させれば、リスクマネジメントシステムの構築が出来る。

4.5点検及び是正処置 

4.5.1監視及び測定


組織は、著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵となる特性を定常的に監視及び測定するための手順を確立し、実施し、維持すること。この手順にはパフォーマンス、適用可能な運用管理並びに組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書化を含めること

組織は、校正された又は検証された監視及び測定機器が使用され、維持されていることを確実にし、また、これに伴う記録を保持すること

組織は環境に著しい影響を及ぼす可能性のある作業や活動のキーポイントの指標を常にモニターし、測定する手順を文書化して、測定を実行し続けなければならない。その記録を必要な期間、保持する事が大切である。

この文書化した手順は目的目標達成のためのプログラム、各種作業等の情報を記録することも含まれる。

このようなモニターに関わる機器は正しく校正されていることが必要で、校正の方法や結果は手順に従って記録されていることが必要である。
校正の記録は、まず、どれが校正機器かを洗い出し、特定し、その校正方法を検討し、記録する。

ここは文章は短いが、実際の現場では多くの記録が、残るところである。
マネジメントシステムは、パフォーマンスだけでなく、このプロセスの記録が大切である。なにか不良な製品を出荷した場合も、プロセスの記録が残っていれば、それがいつ、どうして発生したかを追跡でき、回収すべき製品を特定できる。また、そのような不良が常に発生しているわけではないことを、それまでのプロセスの記録で第三者も確認する事が出来る。このプロセスの記録がないとF社のように不良品を出していなくても屋台骨を揺るがされる事になる。

4.5.2 順守評価

4.5.2.1順守に対するコミットメントと整合して、組織は、適用可能な法的要求事項の順守を定期的に評価するための手順を確立し、実施し、維持すること

組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。

4.5.2.2組織は自らが同意するその他の要求事項の順守を評価すること。組織は、この評価を4.5.2.1にある法的要求事項の順守評価に組み込んでもよいし、別の手順を確立してもよい。

組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。

組織に関連する環境側面に関わる法規制を常に正しく実施している事を把握しておくために、順守結果を評価する仕組みが、組織として必要であると言っている。これは、例えば毎月の定例報告をあげて確認するといったことだけでなく、組織全体としてどうなっているかがわかるようにする事である。よくやっている方法は、法規制一覧表の右側に続いてその法に係る該当施設(環境側面への適用に関係)や該当事項等を記載し、該当事項の次に評価結果を書き込む方法である。このように組織としての評価結果がわかるようにしておクト、これはそのままマネジメントレビューのインプット情報として使える。

順守評価の項目は完全に新しい項目で、その他の要求事項に対しても、組織が同意した以上、法規制と同じように或いは別の手順で順守し評価し、その結果を記録に残すことを要求している。

個人的には、その他の要求事項まで順守評価する事を要求されて、出来るだけその他要求事項の登録をしないようにする傾向になってしまっているので、ここまでの要求は厳しすぎると思っている。

.4.5.3 不適合並びに是正処及び予防処置

組織は、顕在及び潜在の不適合に対応するための並びに是正処置及び予防処置をとるための手順を確立し、実施し、維持すること。その手順では、次の事項に対する要求事項を定めること。

a)    不適合を特定し、修正し、それらの環境影響を緩和する為の処置をとる。

b)    不適合を調査し、原因を特定し、再発を防ぐための処置をとる。

c)     不適合を予防するための処置の必要性を評価し、発生を防ぐために立案された適切な処置を実施する。

d)    とられた是正処置及び予防処置の結果を記録する。

e)    とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする。

とられた処置は、問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合ったものであること

組織は、いかなる必要な変更も環境マネジメントシステム文書に確実に反映すること

組織は、発見された或いは可能性のある不適合を修正、是正する或いは予防する手順書を作成し、生じた環境影響をリカバーする処置(以下是正処置という)をとり、同時にそのような事が繰り返さないような是正処置や予め起こらないように手を打つような事(以下予防処置)を行い、それらを該当手順に反映させる事を要求している。

特に2004年版では、不適合への対処の仕方を細かく規定している。これは96年版では、正しい是正処置があまり行われていなかった反省に立っている。規格の要求事項に書いてある事柄をそのまま様式にして使用し、きちんと各項目を書き込むようにすると再発防止が出来る。

a)不適合とは適合でない状態の事を言うが、修正は、その不適合を取り敢えず適合の状態に直したり、戻したりする事を言う。いわば、緊急の処置である。教育がしてなければするのがこれである。緩和処置も同じで、汚れた水が流れてしまったのなら、取り敢えず、流れないように止める事がこれにあたる。

b)次に原因を究明して、特定し、再発防止策をとるのが、是正処置である。
この時に、単に教育をし直すというような事でなく、仕組みを変えて、二度と起こらないようにするとよい。唯、気をつけるのは、仕組みを変えるといっても新しく作るのではなく、すでにある仕組みにちょっとした工夫をする事で再発防止をするとよい。忘れてしまったのなら、忘れないよう記録に手順を書き込んでおいたり、日程表や計画表に書き込むようにするなどである。

c)予防処置には、2種類あり、まだ起こっていない不適合を起こさないようにする場合と起こった不適合の是正処置を、同じような条件の所に予め処置する事で、同じ不適合が他の場所でも起こらないようにする水平展開とがある。どちらも不適合を未然に防ぐ大切な処置である。

d)取られた処置は記録され、必要に応じて手順を改定する。必要に応じて教育をしなおす。

e)さらに取られた処置が、本当に有効に働いているかどうかも点検する事を要求している。これは、単に事前に確認するのではなく、しばらく処置の結果を走らせておいて、その有効性を確認するものである。従って、いつ有効性をレビューするのがよいかどうかは、その課題による。(例えば内部監査関係では、1年後になるかもしれない。)

不適合が発生したり、発生する事が予見できる時は、それらの原因を除去するが、その是正処置や予防処置は目の前の問題を解決するだけでなく、同じような事が起きないよう範囲を広げて(水平展開)、あるいは環境影響に見合うレベルの大きさで、処置が講じられなければならない。

是正や予防処置が取られたら、それに関わる手順書を見直し必要な変更を加えて、改訂する。

実際には不適合を定義し、そのレベルに合わせての是正処置を決めておく。是正処置には報告書を提出するレベルから口頭での注意まで、各種あることを念頭に置き、実現がたやすく出来るようにすること。是正処置が面倒で、不適合の評価を避けるようなことにならないようにする。

4.5.4記録の管理

組織は、組織の環境マネジメントシステム及びこの規格の要求事項への適合並びに達成した結果を実証するのに必要な記録を作成し、維持すること

組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄についての手順を確立し、実施し、維持すること。

記録は、読みやすく、識別可能で、追跡可能な状態を保つこと

組織は環境マネジメントシステムに関わる記録を作成し、実行し、保管期限がくれば廃棄する手順を作成して実施し続けていかなくてはならない。

これらの記録は、わかりやすく、しかも他の活動との関連が分かるようにする必要がある。このためには環境記録の一覧を作り相互関係を明らかにするとよい。

また、記録は汚れたり劣化したり無くなったりしないように保管維持をする必要がある。各記録は保管期間を定めて、期限が過ぎたものは廃棄手順に従って廃棄する。

記録はこのマネジメントシステムの重要な証拠であるので、いつでも適合を示せるように必要な時に担当者がいつでもすぐ示せるように維持される事が必要である。

特に記載されていないが、記録は評価されている事が大事である。(評価されるとは担当者による記録だけでなく、上司の確認の記載。)

記録の保管を3年とか5年とか一律に決めているところがあるが、目的目標実施計画や内部監査結果報告書、マネジメントレビュー等の重要な記録は、出来ればシステムを続けている限り保管した方がよい。なぜなら、今までの活動の経過を知る事が出来、より深い理解と同じことを繰り返さないために役立つと思う
同じ記録でもその重要性を考えての保管が望まれる。

4.5.5内部監査

組織は、次のことを行うために、あらかじめ定めたれた間隔で環境マネジメントシステムの内部監査を確実に実施すること。

a)組織の環境マネジメントシステムについて次の事項を決定する。

  1)この規格の要求事項を含めて、組織の環境マネジメントシステムのために計画され取決め事項に適合しているかどうか
  2)
適切に実施されており、維持されているかどうか。

b)監査の結果に関する情報を経営層に提供する。

監査プログラムは、当該運用の環境上の重要性及び前回までの監査の結果を考慮に入れて、組織によって計画され、策定され、実施され、維持されること。

次の事項に対処する監査の手順を確立し、実施し、維持すること。
−監査の計画及び実施結果の報告、並びにこれに伴う記録の保持に関する責任及び要求事項
−監査基準、適用範囲、頻度及び方法の決定

監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保すること。

組織はあらかじめ定めた間隔で内部環境監査を行うための計画と手順を作成し、その実行をしなければならない。その内容は以下の事項を満たすようにする。手順は監査の流れと取決めを説明し、計画はチェックリストを含めて日程・人員その他である。(チェックリストは確実に監査を行うためのよいツールであるが、頼りすぎてもよくない。。)

a)環境マネジメントシステムがISO14001の規格の要求事項を満たすように、マニュアルや規定・手順等が作成されているかどうか。それら決め事が、適切に実施されているかどうかをみるために、チェックリストは便利である。
また、前回のチェックとの比較で、改訂されるべき所が改訂されているかどうか、いわゆる維持がキチンと出来ているかどうかもチェックリストの活用で可能になる。

b)監査の結果は経営層に報告されるよう手順を定める。

組織の環境上の重要性に基づく強弱、前回までの監査や審査の結果を反映させたチェックが必要である。(前回までの監査という表現で、原文の複数形を訳しているが、これは監査と第三者審査と両方を指しているとも解釈できる。前回までのでは、どの位前までを指すのかと聞かれたことがあるが、審査と監査との複数形と考えるとこの疑問が生じない。)

監査の範囲を明らかにするためには、部署範囲毎のチェックリスト
(環境管理責任者を含め)があると明確になる。
監査手順には監査の範囲・頻度を明記し、監査の方法、監査を実施する責任者を明らかにし、チェックリスト等に基づいて行う事を明記する。監査はマネジメントシステムの範囲内を一定期間内に終わるよう環境管理責任者も含めて行う。一般に環境内部監査は、トップマネジメントの指示で行われるので、環境管理責任者の仕事も監査される。

監査員は自らが責任を持っている仕事の範囲は監査しない。(監査の独立性)

システム運用が長期間になってきた組織が多くなってきた最近、内部監査の技量の差が、組織の継続的改善の差になってきている。前回のチェックリストを教材にして、次の内部監査員を教育するような事をして、監査員の力量向上も大切である。

4.6マネジメントレビュー

トップマネジメントは、組織の環境マネジメントシステムが引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で環境マネジメントシステムをレビューすること。レビューは、環境方針、並びに環境目的及び目標を含む環境マネジメントシステムの改善の機会及び変更の必要性の評価を含むこと。マネジメントレビューの記録は、保持されること。

マネジメントレビューへのインプットは、次の事項を含むこと。

 a)    内部監査の結果、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守評価の結果

 b)    苦情を含む外部の利害関係者からのコミュニケーション

 c)     組織の環境パフォーマンス

 d)    目的及び目標が達成されている程度

 e)    是正処置及び予防処置の状況

 f)     前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ

 g)    環境側面に関係した法的及びその他の要求事項の進展を含む、変化している周囲の状況

 h)    改善のための提案

マネジメントレビューからのアウトプットには、継続的改善へのコミットメントと首尾一貫させて、環境方針、目的、目標及びその他の環境マネジメントシステムの要素へ加え得る変更に関係する、あらゆる決定及び処置を含むこと。

トップマネジメントによるレビューは、必要な情報を確実に提供されて行われなければいけない。出来ればトップマネジメントはこれらの情報及び改善の提案等を考慮して、自ら活動の反省を新たな取組を決めて、自らの言葉で事業所内に伝え、求心力ある存在になるべきである。

規格が要求しているのは、レビューの記録であるため、この記録さえあればよしとしている所もあるが、本来、マネジメントレビューは、この1年間(多くの場合)のマネジメントシステムの運用に対するトップの思いと今後の運用に関するトップの想いを社内に伝えるための仕組みである。
マネジメントシステムは本来、トップダウンの仕組みであり、それを明確にするのが、環境方針とこのマネジメントレビューである。
トップは下からの積み上げ情報をそのまま、見直しのしてしまうのではなく、中身を精査し、トップの思いを言葉にして見直してほしい。そして、その見直し情報は、トップの言葉で組織内に直接伝えてほしい。そうするとトップの想いが組織内に本当に浸透していくと考えるし、現にそうしてうまくいっているところを見てきている。

ISO14001は環境マネジメントシステムと言いますが、本当は経営マネジメントシステムとして使えます。
この規格を使って、今までの日本的経営から、合理的な経営へ変わっていかれる事を願っています。