小野俊一医師の「フクシマの真実と内部被曝」紹介 本文へジャンプ
 

2012/12/10
最近、小野俊一先生の著作を読みました。「フクシマの真実と内部被曝」という題です。尼崎で行われた同氏の講演会で、講演料のつもりで購入したのですが、その内容の良さにびっくりしました。小野先生は、東電の福島原発で働いた経験があり、本店の原子力安全グループに転勤した後、原発に失望して退職し、熊本大学医学部に入りなおして内科医になられた方です。事故の内容を理解し、具体的に解説され、嘘と真実を見極められています。内部被曝に関しても多くの知見を的確にまとめて書かれています。
初めの東電時代の話は、いかに贅沢な新入社員時代だったか、あの時代はいわゆる大手企業は同じようだったのだろうが。福島第二原発で働き始め、先輩に原発が安いのかと聞いたら、そんなはずはないに決まっている言われた事。経産省が出していた原発の単価が安いという話しは、全くの作り話で、電力会社の申請時の単価は、どれも火力より高くなっている事。原発がCO2の排出が少ないのは嘘で(だから最近は原発の発電時にはと限定するようになった)、停止時には発電所ではなく受電所になると自嘲するように電力をたくさん使っているそうです。冷却やその他メンテナンスに。
安全神話は、作り手と話し手があり、作り手は電力会社、話し手はマスコミ。
原子力発電の原理の話では、原爆も原発も同じものを反応させ、同じ廃棄物が出来る事。唯、その反応時間が短いか長いかの違いだけ。放射性廃棄物が大量に出来る。再処理しても大量に放射性廃棄物は出来る。その処理には、何千年もかかる事。
発電効率で見ると、原発は約33%、火力発電所は45%程度が電気エネルギーになっている。おまけに100万キロワットの電気を作る場合、原子力は200万キロワットの排熱で海を温めており、火力発電所は122万キロワット、天然ガスのコンバインドサイクルでは、熱効率58%で、排熱は72万キロワット。温暖化を進めるのは原発のようです。
電気料金は、必要経費の3%を利益とする総括原価方式で、決められており、莫大な広告宣伝費も皆、電気料金の中で、支払われる。
3.11以降の福一の原発状況についても、現場の人々の話から、最初の地震で原子炉の主蒸気配管が壊れたようで、事故は津波だけが原因ではないようです。地震におり地面が大きく動いている事(水平へ約2.3m、上下に約0.5mの沈降が観測されているのですか、地震での配管等の破壊が起こってもおかしくありません。むしろ、東電の全部同じように水平移動し、沈降したとの説明の方がおかしいのではないでしょうか。
シーベルトの考え方にも言及されています。シーベルトの定義は、物質1キログラムにつき1ジュールのエネルギーが与えられた時、1シーベルトというそうです。即ちエネルギー=熱の単位であって、DNAへの影響等を評価したものでは全くないのです。何故、熱の単位で人体への影響を評価できるのかです

内部被曝と外部被曝は全く異なる事も説明されています。それは放射能と放射線の違いであり、当初、よく言われた医療検査や航空機による宇宙線の影響などは、すべて放射線による外部被曝なので、あまり問題になりません。内部被曝は、放射能を体内に入れてしまう話で、その影響は、原爆投下以降ずっと隠されてきています。そして今も、内部被曝の影響をしっかりとは政府は認識していません。内部被曝の影響が明らかになると核兵器は毒ガスや化学兵器と同じように使用不可になるからです。
内部被曝の影響は、奇形等詳しく述べられています。放射性セシウムが、β線とγ線を出し、細胞のDNAを傷つけ、軽い場合には筋肉痛、心臓に起これば心筋梗塞などの心臓疾患、血管の内皮を傷害すれば脳出血、脳梗塞等を引き起こす事。DNAは細胞分裂が盛んなときほど傷つきやすくこのため大人より子供、更に乳幼児、胎児に影響を与えやすくなる事。この中での筋肉痛にハッとしました。チェルノブイリの影響の中で、ウクライナ訪問記に子供達にどこか痛い人と聞いたら70%の子が手を挙げたと。筋肉痛はちゃんと証明されていたのです。
その他、肥田先生のお話の引用からの具体的な症状のお話も載っています。
肥田先生が、内部被曝は治療出来ないし、被曝を証明する検査もないと言われています。
私はその中にあった原爆ぶらぶら病に胸を突かれました。昨年、仙台にはボランティアに行ったけど、福島にはどうしても怖くて行けませんでした。それは原爆ぶらぶら病になるのが怖かったからです。もし、そうなったらきっと行ったことを後悔するだろうと思うと行けませんでしたし、今も行けません。

又、末尾に重要な問題点が記載されていました。それは、被曝した人の血液の問題です。内部被曝をした場合、当然血液中にも放射能が出てくるでしょう。しかし、現在、献血に放射能検査をしていないし、問診にも被曝を調べる事をしていません。内部被曝をしていない人も輸血による被曝の可能性があるのです。これを輸血被曝と言うそうです。
又、各原発の立地から考え、福島は尤も幸運な立地であったと述べられています。それは海岸に沿って1列に並んでいるため、あちこちからアクセス出来たので、事故対応も出来たというのです。福井県の原発銀座の各原発や玄海原発、伊方原発などは半島の先にあり、1基が事故を起こした時、途中の道や橋が壊れたら、アクセスできずすべてが事故る事になる可能性が大きいとの事でした。

本当にこの本1冊あると多くの疑問点がわかる気がします。尤も、この本が昨年出ていたら、どこまで理解できたかわかりませんが、ずっと手元に置いておきたい本です。