松井英介先生講演報告被曝問題 本文へジャンプ
 
2012/01/28日
岐阜環境医学研究所の松井英介先生の「低線量」放射線内部被曝による子どもの健康障害というタイトルの講演を聞く機会がありましたので、私なりの果実をご報告します。
1.内部被曝を調べる事は、ホールボディカウンターで測定出来ると考えている人が、多いが、ホールボディカウンターで測定できるのは、体を突き抜けるガンマー線だけで、体内に入って大きく影響を与えるアルファー線やベーター線は、外からは検出出来ない事。内部被曝を知るための手段は、尿や便、髪の毛やつめ、抜けた乳歯等で評価。動物実験との結果との照らし合わせで推定する。正確には解剖だけ。
2.フクシマから放出されたのは、セシウムだけでなく、ストロンチウムやプルトニウムもあるが、食品の基準値に、考慮されていない。ウクライナやベルラーシの食品基準には、ストロンチウムが決められている。
3.プルトニウムは、放出量が少なくても、アルファ線を出すため、体内に取り込まれると(吸い込まれて肺に沈着)DNAの切断をし、修復不可能な傷を負わせる可能性が高い事。
4.DNAの切断によって、先天障害や悪性腫瘍、免疫不全やT型糖尿病、心臓循環器疾患など晩発障害の原因になること。
5.放医研では、数年前から内部被曝を検討する部門が、政府の方針で無くなっている事。
6.低線量の影響に関し、ICRPは直線モデルをECRRは、直線よりさらに影響がある曲線を考えており、日本政府は、ICRPよりもさらに影響を過少評価して、影響がないとしています。
7.食品の新基準値は、4月からの施行だが、お米、牛肉は9月まで、大豆は1年間500ベクレルで良しとしている事
8.クリアランス制度が国会で通過したため、放射性廃棄物を一般の廃棄物と混ぜて焼却してよい事になってしまったので、この制度を変えないといけない事
9.シーベルトという単位は、いい加減なもので、しっかりした根拠がない。特にICRPの換算値は、チェルノブイリの現状と照らし合わせると過小評価している事が明らかになってきたことが、各種病気の発生数から説明。特にアルファー線ベーター線では過小評価が大きい。
10.セシウム検出の牛などは解剖して、セシウムがどのように分布しているかしっかり観察することが必要だが、行われていない。
11.ICRPでも当初、内部被曝を研究していたが、内部被曝を適切に考慮したら、原発の労働が出来ない事がわかってきて、内部被曝の検討をチームを解散してしまったとの事。
12.ICRPは、原発推進の団体が資金を出している民間の団体で、原発を推進したい国だけが、ICRPを尊重している。これに対してヨーロッパで起こった団体がECRRで、内部被曝に関する情報を出している。
13.2008年のベラルーシの死因統計では、心臓病が52%で半分以上を占めている事。
14.ゴメリでの病理解剖時のセシウム137の臓器別分布では、甲状腺が最も多く、心筋、腎臓、筋肉、小腸、脾臓が多い。
15.バンダシェフスキーによると生体内セシウムの多い子ほど、心電図が正常な子が少ない事が報告されている事。
16.除染は現実的に困難である事を考え、子供達の被曝を少なくするための対策、疎開や食品の提供等を行う事を国に要求すべきである事。
17.産業廃棄物を飛散させた東電の責任を強く追及する必要がある事

私は予てから疑問に思っていた点を次のように質問しました。
「カリウムとセシウムが同じ体内動態と先生も言われていましたが、原子量も40と137と3倍も異なり、大きさもカリウムの次にルビジウム、その次がセシウムなのだから、カリウムのように細胞内に存在するとは思えず、同じように行動するとは思えない」と
それに対し、先生は、体内分布を調べる必要がある事、あまり厳密に考えていなかった事等のご返事がありました。