ISO14001構築の方法(1)Plan

ISOはすべてマネジメントシステムという考え方の基づいて規格が書かれています。
マネジメントシステムは、Plan現状を把握して計画を立て、Doその計画を実行し、Check実行した結果を点検し、良い点は更に、悪い点はその原因を究明して再発防止を図り、それらの結果を経営トップが判断して、次の計画につなげていくという考え方です。

従ってまずトップがこの仕組みを入れて事業を運営していくことを決断します。このトップの決断なくして(受け身的に導入しておくように、等と言っている程度では、この仕組みの有用な活動はおぼつかない)、先に進めません。従来の日本的なやり方で、下からの積み上げで構築しようとしても、とても無理があり、努力しても努力してもなかなか進まず、少し進むと上の反対で後戻りさせられるという事の繰り返しになります。無駄な努力はしないことです。

トップはまず、環境管理責任者を決めます。そして本来は自分がやるつもりだが、実際には出来ないので、すべて環境管理責任者に委託します。トップの次席の人が、その役をやる場合は問題ないのですが、そうでない場合は、必ず、他の責任に関わりなく環境管理責任者を任命する事を明示しなくてはなりません。他の責任に関わりなくとは、毎日の仕事上の立場とは別の権限が環境の仕事をする時は与えられるということです。

任命された環境管理責任者は、環境管理の組織を作り、ISO14001の構築に取り掛かります。
以下の構築を行っていく時、必ず、記録をとり、手順を決め、それら文書の取り扱い方法を決め、文書や記録に責任者名と日付、文書番号を付すようにします。

トップはまず環境方針を定める事になっていますが、環境側面の結果も考えて定めてもよいです。

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4.3.1環境側面
環境マネジメントシステムでは、現状把握を環境側面の調査と呼んでいます。これは事業活動に係る環境に負荷を与えている或いは与える可能性のある原因となる活動を洗い出すものです。そしてその洗い出し作業の中で、その負荷の量をきちんと把握しておきましょう。例えば、電気量や廃棄物の量がそうです。中には騒音や臭気といった手軽には測定できないものもあります。それらの苦情の記録があれば、それは負荷が高い環境側面と認識しなければなりません。
昔から(とって言ってもまだ10数年前ですが)、この環境側面の調査に膨大な時間と手間がかかると言われていました。しかし、そのような手間をかけた環境側面調査が良い影響評価につながっているかというと?です。むしろ、片っ端から洗い出すという事より、本当に環境負荷の高いものを抜けないように洗い出す誠意ある態度が何よりです。あとの作業を考えて問題になるような物をわざと見逃すことのないように、細かなことばかりにとらわれて、肝心の事がボケる事のないようにする事が大切です。
各部門ごとに、或いは工場内や社内の場所ごとにインプット・アウトプットの工程図を作って、環境負荷を書き込んでいくと漏れが少なくなるでしょう。

4.3.1環境影響評価
洗い出した環境側面は次に環境影響評価を行います。どのような方法をとるかは、事業者に任せられていて、規格ではこのように評価しなさいとは言っていません。ただ、誰がやっても同じように出来るようにしておく事が必要です。即ち合理的な根拠とそれに基づく手順です。一般に影響評価を数値化して、その大きさの順に並べ、著しい環境側面と定めている場合が多いです。規格では著しい側面を明確にする事を求めていて、その負荷を削減するような目標を持って実行していくことを要求しています。
しかし、評価をする時、電気の使用量と、廃棄物の量、あるいは水道使用量を、どう評価するか問題です。一般に 温暖化、資源涸渇、大気への影響、水系への影響、埋め立て地の問題、アメニティ、騒音、悪臭などで定性的な評価をしてから発生の可能性、量的な問題等を考えて評価しています。
そして大切なのが、環境影響評価は、何のためにするかという事です。自分達の活動の環境負荷量を知り、それを削減するためにISO14001を構築、運用するのです。即ち、活動を続けていくと、この環境負荷量が減っていくことが見える事が大切です。なぜなら、環境負荷はたくさんあります。それらをすべて一度には取り組んでいけません。その時の優先順位を決めるのに役立つのが、この影響評価です。ですから、取り組んで、だんだん負荷を減らしていけたら、毎年のその項目の影響評価量が減り、ある程度まで来たら次はこれに取り組もうと別の負荷に取り組むのです。そのような役に立つのように影響評価が出来ればいいのですが、実際にそのようにうまくやっているところはほとんど見た事がありません。形だけになっていて、実際の決定因子は別になっているのです。
また、別種の負荷を同じように評価するのは、難しいですが、事業者としての必要性や量の大きさ、社会的要請、利害関係者の要請を加味して決めていきますが、負荷の共通の指標として、金額も役立つと思います。金額の高いものほど環境負荷が高いのはある程度言えるのではと思います。人件費で高くなっているものは除いて。また、金額ベースは説得力もありますが、金額至上主義になってはいけないのは当然です。
量的な変化の捉え方は、ゼロを起点とするのではなく、現在値を上から2番目くらいにおいて、少しの変化が反映されるようにする案もあります。製造量が変化すると不利のようですが、同時に単位重量当たりをとって、複眼でとらえるようにして矛盾を少なくする工夫があるとよいでしょう。
でも、京都議定書は絶対値である事を忘れないようにしましょう。

このような環境影響評価、現在のものだけでなく、計画中のものも作成します。あるいは土壌汚染のように過去の活動に関係する負荷もありますので、過去の活動についても一度は影響評価をしておくべきです。

また直接自分達が携わっていなくても、委託生産を依頼している場合などは、自分達がやっている事を代わりにしているだけなので、自分達の負荷に準じると認識すべきです。

4.3.2法的及びその他の要求事項
事業者は、上記環境側面に係る法規制を順守するため、内容を把握し、順守の手順を決め、記録し、その結果を評価(記録した人と異なる人が、記録の内容をチェックする事)する手順を決め実行する事を求めています。これが規格が言っている確立し、実施し維持する事です。維持というのは英語ではmaintainで、いわゆるメンテナンスです。つまりどこか悪い点・変更があったりしたらそれを変更し、常に最適な状態に保っておく事が維持です。

その他の要求事項とは、法律ではないが、自主的に約束した事がらで、同業者団体や近隣や消費者への明文化された約束です。

法的及びその他の要求事項は、一覧にして自分達の義務や関係する施設、必要な記録の名称・場所、責任者を明確にし、環境側面との関わりも書き込むと規格の4.3.2のa),b)の要求を満たせます。

また、現在の自分たちには直接関係していないが、関係する可能性のある法律(例えば法的義務量以下とか地域が異なるような)も、一覧にして目に触れるようにしておくと、条件が変わったときにまったく見逃すことが避けられます。環境に関わる法律と、自分たちに関わる法律と両者を共に捉まえておくと万全です。

4.3.3目的、目標及び実施計画
事業者は、環境方針、著しい環境影響評価結果、法的及びその他の要求事項、更に社会情勢や経済的、技術的可能性や、利害関係者の要望などいろいろな事を考慮に入れて、環境目的を3-5年先をめどに作成し、そのうちこの1年間の進むべきターゲットを目標として定めます。その際、進捗管理ができるように出来るだけ数値化する事が必要です。直接の数字が取れないような活動では、人々の行動を数値化する方法もあります。環境活動をどれだけやったかとか何人参加したとかで活動の成果を推測するようにします。

目的目標が定まれば、次に実施計画を立てます。この実施計画が本当に役立つように作成されている例は、めったに見ません。
特に目標の実施計画は、スケジューリングをして進捗管理をするものですが、その中に「どうやって」Howの表現が十分でない例が多いです。どうやってやるかを明示できなければ、実際に実行する人は困ってしまいます。あるいは毎年毎年(目的の実施計画によくありますが)、同じ対策が書かれているものもあります。これを見たら誰でも、初めにあまり頑張らない方がいいなと思うでしょう。そうでないと毎年数値を良くする事は出来ませんから。

このどうやっての部分は、現場に落としこみ皆で議論して決めるのもよいでしょう。案外、現場には改善のよいアイディアが転がっています。もし、このどうやっての部分が思いつかなければ、その目的目標は達成することは不可能なはずです。

そしてこのどうやってをしっかり考えて実行する習慣を、本来の仕事そのものにも実行していければ、仕事の効率はずっと上がるはずです。

この実施計画を作成して、進捗管理をしてくやり方は、マネジメントシステムの良い点です。初めに時間はかかりますが、目標を確実に達成するためには、必要な方法です。

また、目標は組織全体に係るものですが、目標は、それだけでなく、各部署で特有な環境側面を取り上げることも大事です。昔から日本の工場でやっていた改善活動を組織的にするのが、マネジメントシステムです。