ISO14001構築の方法(2)Do-1

機構

目的目標が定まり、実施計画を立てる前に、組織は、この環境マネジメントシステムを実施していく仕組みを作ります。
トップはまず、環境管理責任者を任命します。そして、トップ自らは出来ないので、環境管理責任者に、トップに代わって、組織内に閑居マネジメントシステムを構築し、実施し、維持していきます。

従って、環境に関わることは、トップの次に環境管理責任者がいます。規格では「他の責任に関わりなく」と表現しています。これは通常の本来業務における立場とは関わりなくという意味です。ですから、トップの次の位置の人が環境管理責任者になる場合は問題ないのですが、そうでない場合は、この意味をしっかり認識する必要があります。

マネジメントシステム構築のため、プロジェクトチームを作ったり、環境事務局を作ったりされるでしょうが、出来るだけ、本来業務のラインに乗っけて、仕組みを作る方がよいです。
本来業務と別の組織で環境活動をしようとすると、どうしても特別の活動をしている意識になり、余計なことをやらされているように受け取られることがあります。
環境活動は決して特別なことではなく、本来業務を進めていく上でも考慮していかなくてはいけないことですから、はじめから本来業務の組織に乗っかった方が自然な仕組みになります。
しかし、どうしても別組織を作らないと仕組みを作ることが難しい場合もあります。時間的な制約のある場合もそうです。その時は、環境事務局が主になって仕組みを作り、認証を受けてから、次の更新審査までの3年間で、徐々に仕組みをラインに乗っける作業をしていくとよいでしょう。

教育

人の機構(仕組み)が出来上がったら、まず、教育をしましょう。まず、環境管理責任者やその関係者が、学ばなければなりません。ISOの研修機関に習いに行ってもいいですし、コンサルタントを頼んで、まず教育研修からはじめてもいいです。コンサルタントの場合は、はじめから自分たちにあった形で教育を受けられるメリットがあります。研修機関では、あれこれ学んでも、結局具体的にはどうするの?ということになりかねません。私も昔、会社で立ち上げるとき、研修機関の話ばかりでなく、いろいろな講演会や研修会に行って、いろいろな角度からマネジメントシステムを学びました。

文書化

マネジメントシステムを構築するときの一番の課題が文書化です。
手順を決めて、記録をとる。これがマネジメントシステムの基礎です。そして、今のビジネス界では、いや日本社会では、それが常識になってきています(欧米では昔から常識でしたが)。何かあったとき、まず求められるのが手順と記録です。

環境マネジメントシステムを構築するに当たって、始めに行うことは、手順を規格に合うように作成します。
しかし、運用管理に属する多くの既存の活動は、既に行われていることです。その手順が文書化されていない場合や記録が取られていない場合には、その手順の作成は、現場に任せましょう。現在やっているとおりに手順を作成してもらいます。手順は、文章であることは必要でなく、フローチャートでも、図でも写真でもよいのです。そして誰が何をいつどのようにするかを明確にしてもらいます。要は、それを見ながら誰でも同じように出来ることが必要です。もちろん、誰がは固有名詞ではなくてよいです。

事務局は、出来上がってきた手順や記録を確認し、責任者や作成日は付けられ、法規制等に違反することがないことを確認します。
記録は、その紙面に書き方や記載の手順や基準を簡単に書き込んであると、間違えなくてよいです。
実際にやっているとおりに手順が書かれていること、これが大事です。

文書管理

文書は、規格に書かれているように、文書管理を行うよう管理手順を定めます。
これは、決めた手順を勝手に変えないようにするためです。しかし、手順が変えにくいと、改善活動などで、現在の状況を少しづつ良くしていく活動が出来にくいとも考えられます。現場での改善活動の積み上げで、日本の製造業は強くなってきたのですから。
しかし、手順をその基本を考えないで、便利だからとか楽だからと現場で手順を変えていくと、昔あったJOCの核融合反応事故のようなことになります。手順の変更が現場だけでなく、上司の許可が必要なことはこの事件からも明らかです。
必要に応じて、手順の変更がスムースに出来るように、あまり上の方の上司にしないことも必要です。内容が良くわかっている直近の上司が良いでしょう。

文書管理の一つに配布管理があります。現在は電子化により社内LANで確認することが多いでしょうが、その場合はあまり問題になりませんが、紙ベースでの配布をしている場合は、古い版をそのまま使うことがないように、新しいものの配布をきちんとして更に古いものをきちんと回収する管理が必要です。

外部文書についても同じように配布管理をすることが求められています。外部文書とは、外部で作成された文書で、内部でそのまま使用するものを言います。例えば機器の運転手順や登録証などです。版が古くなっているのに、交換されていないようなことが起こらないよう配布管理が規定されています。その内容を自分たちで書きなおしている場合は、内部文書になります。

記録は文書の一部とされていますが、記録と文書は大きく異なる点がいくつかあります。
まず、文書は改定されて使用されますが、記録は改定はありません。改定された場合は、改竄とされ、記録の価値がなくなります。
また、記録は一定期間保管し、保管期限が切れたものは廃棄することになっています。保管期間をどのようにするかは、組織が決めることですが、毎日の監視測定のようなものは、一定期間ごとの記録の評価を残すことで、早めに処分しても問題ありません。
しかし、目的目標や内部監査の結果、マネジメントレビューのようなものは重要なので、環境マネジメントシステムを運用している間は、保管するくらいが良いです。これが3年とか5年とかで廃棄しているところを、時々見かけますが、廃棄してしまうと過去のことがわからず、担当が交代したりすると、昔やっていたことをまた繰り返したりします。過去の実績をしっかり残すことは、大事なことと私は思っています。

力量、教育訓練及び自覚

4.4.2項では、3種類の人々への教育訓練のあり方を要求しています。
まず力量を必要とし、その記録を残さなくてはいけない人々です。この人たちは、著しい環境影響を与える可能性のある作業をしている人々で、もしその作業で何かを間違えてしまった場合、それによって環境に影響を与えるような作業を言います。例えば廃水処理の担当者とかボイラーをたいたり、重油の搬入を担当している人等が該当するでしょう。
力量というとどう判断するのか途惑う人もいますが、難しいことではありません。要は、その人が一人前に出来るかどうかです。更に言えば、力量の判断基準を半人前、一人前、指導者レベルと分けて判断すると実務的にも有用でしょう。上司が転勤して来ても、すぐに誰に仕事を任せられるかわかるわけですから。今までもこのような力量判断は、各職場でなされてきているはずです。なぜなら、ドライバーを雇うとき、誰も、運転免許証だけで判断することはないでしょう。1度は同乗して力量を判断しているものです。今までは頭の中だけで収めていたものを目に見える形にしたのが、この力量です。力量を必要としているのは、著しい側面に関わる仕事をしている人でなく、何かミスをしたら、著しく環境に影響を及ぼす可能性のある仕事をしている人を指している点を間違えないでください。

次の段階の人たちは教育の記録をとる必要のある人たちです。組織が決めた教育をする必要がある人々で、環境側面やマネジメントシステムに関わる人々で、目的目標に直接関わる人々や文書管理、法規制その他組織が決めた教育の必要な人々です。
具体的には、各職場のリーダークラス、係長とかベテラン平社員などです。実際に職場で目的目標の管理をしたり、文書の亜kんりをしたりする人々を考えるとよいでしょう。もちろん、社員や関係者全員をこのレベルにして教育しても良いです。多くのISO認証取得企業では、このレベルを全員に課している場合が多いです。

更に自覚をさせるための教育は、手順を定めて実施し続けることが必要で、記録は要求されていませんが、したことの証明として記録を残すほうが良いでしょう。
その内容は、規格にあるように
    1) 環境方針の理解と各種手順とマネジメントシステムの言っていることを理解し、そう行動することの必要性を学ぶこと。
    2) 自分の仕事がどのように環境負荷に関係しているか、自分の作業の改善がどのように環境に良いことになるかを知ること
    3) 環境マネジメントシステムを実施していくときの自分の役割と責任
    4) 決められた手順を守らなかったら、どのような環境負荷の増大につながるかの予想
これらは自覚させることが、要求されています。