ISO14001構築の方法(4)Check

点検

監視及び測定

はじめのところで、マネジメントシステムは手順と記録がその根本とお話したのを、覚えておられますか?
その記録の部分が、ここの監視測定の項目に関わってきます。
監視は、英語ではモニタリングといっており、日本語でも監視というより、モニタリングと言った方がぴったりするように思います。
実際の状況をモニタリングし、記録に残す。これがきちんと実行している証拠になります。
最近は自動的に記録が取れる場合や記録をとる事が当然になっている職場も多いと思います。
大変なようでも、記録は、実施したことの証拠の品ですから、何かあったとき、自分達の身を守ってくれますし、なにかあったとき、記録を振り返ることで、事件のトレースをしたり、実行方法の反省をしたりする良い手立てにもなります。

数年前、S県で起こった食肉製品の病原菌検出事件は、製造会社のきちんとした記録が保存されていたおかげで、検査をした県研究所の間違いであったことが証明されました。記録が自分達の正しさを証明してくれた好例です。

監視測定するものは、著しい環境影響に関わるもので、目的目標の実施状況から運用管理されているものまでで、手順を決めて行います。

また、このような監視測定の機器が正しく校正されていなければ、意味がありませんので、使用する機器の校正もきちんと校正の証拠を記録しておく必要があります。

順守評価

法規制に関わる監視測定は、順守評価として定期的に評価することが規格で要求されています。
これは2004年版から新たに入った項目で、それまでは上記の監視測定の中にありました。
ここでいう評価とはどうすることでしょうか?しかも組織が評価せよと言っています。
つまり、それまでの担当者による記録と上司の確認(これが評価ですが)だけでなく、組織としてそれらが正しく行われていることを評価せよと言っているのです。

具体的には、四半期や半期に定期的に順守評価の結果を確認することになります。
どのような頻度かは、順守の内容によって異なってきます。廃棄物処理業者の契約や許可証の順守なら、1年に1回で十分でしょう。 でも、大気汚染の状況や排水処理の状況は、それでは何か問題が出た時には遅すぎますから、頻度を上げる必要があるでしょう。
よくあるやり方は、定期的な環境委員会で報告されて記録し、法規制一覧表に個別の結果をまとめて書き込むような方法です。

組織によって関係する法律も異なりますので、自分達がこれなら正しく順守状況を評価出来ると納得できる方法で行うことです。

法規制ばかりでなく、その他の要求事項も同じような順守評価が求められています。
必ずしも監視測定には結びつかない場合もありますので、何に関連付けるかを決めて評価し記録に残すようにすると良いでしょう。

不適合並びに是正処置及び予防処置

この項目は、規格の中では珍しく、何をやるべきかを細かく書かれているところです。それだけ、大事で、今まで十分行われていなかったからでしょう。

まず、不適合を定義すること、或いは是正処置をどのような状況で、どう行うかを定義することが必要です。
通常、不適合は適合でない状態を不適合とし、是正をかけるレベルを何種類か設定するのが普通です。これが「とられた処置は、問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合ったものであること」という規格の要求事項に該当します。
例えば、目標の進捗状況が未達成の場合、毎月毎月未達成だからといって是正処置をしていたら、手間ばかりかかって、その意味が余りありません。3ヶ月連続とか、年度末までにはどうしても回復できそうにないほどの未達成の場合に是正処置をし、それ以外の未達成は、進捗管理している実施計画の中に備考欄を設けて、そこに未達成の理由や更なる工夫を書き込むようにするのも良いです。実施計画の中に書き込む形をとると、毎回同じことを書けないので、あれこれ工夫する努力が行われやすいです。是正処置では、書いたものが身近にないので、毎回、同じ内容の是正処置を書いているような例もあります。これでは時間と資源の無駄です。

そして、それらの是正処置はこのマネジメントシステム文書に反映させ(関連する手順の変更)、確実なものとすることが要求されています。

次に是正処置を規格の記載順に説明します。
a)に修正という言葉があります。修正は不適合の状態を適合の状態に戻すことを言います。つまり、教育がなされていなかったという不適合に対し、教育をしましたというのが修正です。 環境影響を緩和する処置をとるとは、ボイラーから黒い煙が出ていたら、ボイラーを止めるのが修正です。

b)次に不適合の原因を調査して、突き止め、再発しないような手立てを講じます。これが是正処置です。
教育をするのを忘れたのが原因なら、どうして忘れたのか、忘れないような手立てを講じる、つまり仕組みを作ることが必要です。でも、何か新たな仕組みは、あまりお勧めできません。なぜなら是正処置のたびに新たな仕組みを作っているとどんどん複雑になってきてしまうからです。既にある仕組みにちょっと手を加えるようなことがよいです。教育を忘れないために、環境の年間計画を作り、教育だけでなく、やるべきことをすべて書き込んでおくとか、既にある人事部の教育計画の中に環境の教育計画も含めてもらうようにすることです。

c)1つの不適合に是正処置がとられたら、同じような条件の場所や事柄がないか考え、まだ不適合にはなっていないがなる可能性がある場合は予防処置をとります。教育計画だけでなく他の環境予定も年間計画に入れて忘れないようにすることも他の事柄からは予防処置になります。

d)そしてこれらの是正処置、予防処置は記録に残します。

e)更にとられた是正処置、予防処置は、有効性をレビューせよと規格は要求しています。
有効性を確認すのですから、この処置は、是正処置や予防処置がとられて、ある程度走ってから、とられるものです。
どのくらい経ってから有効性のレビューをすればよいかは、その内容によって異なると思います。
製品の製造工程の是正でしたら、ちゃんとした製品が出来ていることの確認ですから、すぐ必要でしょうし、排水処理などの問題でしたら数週間内にレビューすればよいでしょうし(勿論、内容によって異なります)、内部監査でした、次の内部監査後でしょう。

不適合に対してこのように是正処置をとっていく事は、いわばこのシステムのバグを発見して、直していくような事柄と同じと気づかれませんか? 不適合という言葉は何か悪いイメージがありますが、バグだと思うと、それは早く発見して処置すべきものとわかります。
そうなのです。不適合は早く見つかった方よいバグと同じものなのです。
ITでのシステム構築では、走り出す前にいくら検証しても、やっぱりある程度のバグが見つかります。そして早く見つかれば見つかるほど、被害は少なくて済みます。マネジメントシステムの不適合もこれと同じです。不適合という名称をやめてバグにしたいですね。

記録の管理

記録の必要性を散々説明してきましたから、もういいと思われるかもしれませんが、ここでは記録後の事を言っています。
記録は放っておくとどんどん溜まって大変です。保管期限を決めてその後は廃棄するよう規格は言っていますが、気をつけてもらいたいのは評価してから廃棄していくことです。最も廃棄に限りませんが、記録は必ず評価することを忘れないようにしてください。
評価するとはどういうことかというと、記録した人間の上司によって確認することで、評価者の名前と日時を記載します。これによって記録は価値が高まります。外部から送られてきた測定の記録なども単に記録をファイルするだけでなく、受け取って中身を確認した人間の名前と日時をそこに書き込んでおきます。それによって、その記録がきちんと管理されていることがわかります。また、浄化槽などのようにその記録に問題点が書かれている場合は、その後の処置も同じ記録に書き込んでおくと、後から見たとき、その問題点がどのように処置されたかが簡単に確認出来ます。新たな書類を作る必要はありません。
記録を廃棄するときは、その廃棄する部分の評価の記録は残すようにしましょう。まとめて書かれていれば、残してもそれほど場所をとらないでしょうし、後々何かあった時に、追跡できないと困りますので。
記録が追跡可能であるためには、記録そのものを識別可能にしておかなくてはなりません。
そのためには記録に名称や記号・番号などを付して、関係している文書との関係がわかりやすくしておくと良いです。勿論、文書も同じような記号を付して、規格のどこに関係する文書であるかを明確にします。

記録は大切だけど始末に困る。IT化が進めば、かなり解決出来そうですね。