食品関連法規について

食品安全基本法:平成15年(2003年)に制定さました。基本法なので義務や罰則はないが、その考え方を先取りして実行していくことが、現在の食品界では必要と考えられます。

(食品供給行程の各段階における適切な措置)
第四条  農林水産物の生産から食品の販売に至る一連の国の内外における食品供給の行程(以下「食品供給行程」という。)におけるあらゆる要素が食品の安全性に影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品供給行程の各段階において適切に講じられることにより、行われなければならない
(国民の健康への悪影響の未然防止)
第五条  食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品の安全性の確保に関する国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じられることによって、食品を摂取することによる国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、行われなければならない。
(食品関連事業者の責務)
第八条  肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある農林漁業の生産資材、食品(その原料又は材料として使用される農林水産物を含む。)若しくは添加物(食品衛生法 (昭和二十二年法律第二百三十三号)第四条第二項 に規定する添加物をいう。)又は器具(同条第四項 に規定する器具をいう。)若しくは容器包装(同条第五項 に規定する容器包装をいう。)の生産、輸入又は販売その他の事業活動を行う事業者(以下「食品関連事業者」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たって、自らが食品の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、食品の安全性を確保するために必要な措置を食品供給行程の各段階において適切に講ずる責務を有する。
 前項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る食品その他の物に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
 前二項に定めるもののほか、食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品の安全性の確保に関する施策に協力する責務を有する。

そして更にISO22000で取り上げられている要素、或いは昨今の食品関連不祥事を防ぐための要素の観点で、条項を列挙すると以下のようになります。
第13条(情報及び意見の交換の促進)  条文からは行政の行う施策に対する規定のようですが、内部・外部のコミュニケーションの充実を言っています。
第14条(緊急の事態への対処等に関する体制の整備等) 緊急事態に関してコーデックスは特に述べていませんが、ISO22000では要件としています。
第15条(関係行政機関の相互の密接な連携)  外部コミュニケーションとしてISO22000も強調している事です。
第17条(国の内外の情報の収集、整理及び活用等)  最新の情報で常に食品製造工程を見直す必要性をISOは何度も強調しています。是正処置、検証活動、妥当性確認の際、最新の情報でのレビューを言っています。
第18条表示制度の適切な運用の確保等 多くの回収の原因であり、最も多い法違反です。食品衛生法とJAS法の2法が関係しています。
第19条(食品の安全性の確保に関する教育、学習等) 教育の必要性はコーデックスでもISOでも述べています。
第20条(環境に及ぼす影響の配慮) 食品安全の本質にかかわらない回収は、本当に必要かどうかを考えたいです。
 

食品衛生法:昭和22年に制定され、平成15年に抜本的な大改正が行われました。ISOに関わる要点と最近の法令違反に関わる点を以下に述べます。

第三条  食品等事業者(食品若しくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、若しくは販売すること若しくは器具若しくは容器包装を製造し、輸入し、若しくは販売することを営む人若しくは法人又は学校、病院その他の施設において継続的に不特定若しくは多数の者に食品を供与する人若しくは法人をいう。以下同じ。)は、その採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、販売し、不特定若しくは多数の者に授与し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装(以下「販売食品等」という。)について、自らの責任においてそれらの安全性を確保するため、販売食品等の安全性の確保に係る知識及び技術の習得、販売食品等の原材料の安全性の確保、販売食品等の自主検査の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
○2  食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生の防止に必要な限度において、当該食品等事業者に対して販売食品等又はその原材料の販売を行つた者の名称その他必要な情報に関する記録を作成し、これを保存するよう努めなければならない。
○3  食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生を防止するため、前項に規定する記録の国、都道府県等への提供、食品衛生上の危害の原因となつた販売食品等の廃棄その他の必要な措置を適確かつ迅速に講ずるよう努めなければならない。
第十三条  厚生労働大臣は、第十一条第一項の規定により製造又は加工の方法の基準が定められた食品であつて政令で定めるものにつき、総合衛生管理製造過程(製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法につき食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の過程をいう。以下同じ。)を経てこれを製造し、又は加工しようとする者(外国において製造し、又は加工しようとする者を含む。)から申請があつたときは、製造し、又は加工しようとする食品の種類及び製造又は加工の施設ごとに、その総合衛生管理製造過程を経て製造し、又は加工することについての承認を与えることができる
第十九条  厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物又は前条第一項の規定により規格若しくは基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。
○2  前項の規定により表示につき基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。
第二十条  食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない。
第五十条  厚生労働大臣は、食品又は添加物の製造又は加工の過程において有毒な又は有害な物質が当該食品又は添加物に混入することを防止するための措置に関し必要な基準を定めることができる。
○2  都道府県は、営業(食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第二条第五号 に規定する食鳥処理の事業を除く。)の施設の内外の清潔保持、ねずみ、昆虫等の駆除その他公衆衛生上講ずべき措置に関し、条例で、必要な基準を定めることができる。
○3  営業者(食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第六条第一項 に規定する食鳥処理業者を除く。)は、前二項の基準が定められたときは、これを遵守しなければならない

農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(平成10年の改正て表示の項目が入りました)

(法律の目的)
第一条  この法律は、適正かつ合理的な農林物資の規格を制定し、これを普及させることによつて、農林物資の品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図るとともに、農林物資の品質に関する適正な表示を行なわせることによつて一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

主な法律を取り上げましたが、更に次のような指針もあります。これらを見ても、ISO22000を導入する事は、なにか特別なことではなく、現在の法律上も要請されている事である事がお分かり頂けると思います。

食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)について(平成16年2月27日)
コーデックスの食品衛生の一般原則を参考に「管理運営基準準則」を全面的見直したものです。
項目を列挙してみるとISO22000の前提条件プログラムに相当することがわかります。

第1 農林水産物の採取における衛生管理
第2 食品取扱施設等における衛生管理
  1 一般事項
  2 施設の衛生管理
  3 食品取扱設備等の衛生管理
  4 そ族及び昆虫対策
  5 廃棄物および排水の取扱い
  6 食品等の取扱い
  7 使用水等の管理
  8 食品衛生責任者の設置
  9 記録の作成及び保存
 10 回収・廃棄
 11 管理運営要領の作成
 12 検食の実施
 13 情報の提供
第3 食品取扱施設等における食品取扱者等の衛生管理
第4 食品取扱施設等における食品取扱者等に対する教育訓練
第5 運搬
第6 販売
第7 表示

食品の製造過程の管理の高度化に関する基本方針 (平成10年7月1日)

既に10年前にHACCPの考え方を取り入れた総合衛生管理製造過程が始まっていましたが、その時に出ていた方針です。
HACCPの考え方を説く前般はよいのですが、具体的な話では、建物・機械・装置の整備をはじめに述べていて、さらに経済的な支援の法律を作成するなどしたため、HACCPがすっかり箱物になってしまった経緯が推測されます。

HACCPは建物や機械がそれようになっていないと出来ないわけでなく、ソフト面で十分カバーできます。また、ハードがいくら立派でも、ソフト(従業員の教育・訓練)が出来ていなければ目的は達成できません。

ISO22000は現在要求されている食品安全の考え方をさらに一歩進めて、確実に行われるような仕組みにしたものです。
自主的な管理運営基準もありますが、広い視野に立って、第三者の認証機関が責任を持って審査する事が、今は一番確実な信頼となっているのではないでしょうか。一部事業者の誠実さがここまで損なわれていた事が2007年に明確になった事は、本当に悲しむべき事ですが、これを他山の石として、食品関連事業者が取り組まれる事を願っています。。

 お気づきの点ご連絡いただければありがたいです。green@m-epoch.com