第5章 環境への負荷の自己チェックの手引き

 

1.環境への負荷の自己チェックの目的

環境への取組を行うには、まず、自らの事業活動に伴って環境への負荷がどれだけ発生しているのかを知ることが重要です。「環境への負荷の自己チェック」では、事業活動全体における物質やエネルギー等のインプット、アウトプットを把握するマテリアルバランスの考え方に基づき、事業活動における9項目の環境負荷について把握します。9項目の中でも、温室効果ガスのうち二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、総排水量(あるいは水使用量)及び化学物質使用量(化学物質取り扱う事業者の場合)は必ず把握します。

環境負荷を把握する際には、自らの事業活動全体を見渡して、「どの事業活動が環境に大きな影響を与えていると考えられるか」を検討し、環境に大きな影響を与えている活動、施設、設備、物質等を特定します
そのためには、事業活動の一連の工程を抽出し、各段階において生じる環境負荷を洗い出してみることが有用な手段となります。各段階で何を投入(インプット)し、何が大気や水等に排出(アウトプット)されているかを整理することにより、環境に大きな影響を与えている活動、施設、設備、物質等を特定することが可能となり、環境負荷の削減のために何に取り組むべきかが明らかになります。
なお「総製品生産量または販売量」は、一般には環境への負荷ではありませんが、全体のマテリアルバランスの観点から把握します。

また、自らの事業活動の“川上”、“川下”を含めた、製品等のライフサイクル全体の環境負荷を把握することは、地球温暖化対策や循環型社会を形成していくためにも重要です。

2.別表1 環境への負荷の自己チェックシートの使い方等について

(1)チェックシートを使用する際の留意事項

・ 別表1に示しているチェックシートは、環境への負荷の自己チェックが容易になるように、例として示したものです。個々の事業者の状況に応じて、項目、排出係数、単位等について適宜修正することが可能です。重要なことは、年々の負荷量を同じ規準で容易に比較できるようにすることです。
二酸化炭素の排出係数については、国が公表する電気事業者ごとの排出係数を用いますが、毎年新たな排出係数を用いるのではなく、原則として一定期間(中長期の目標設定期間等)固定とし、環境目標の管理や経年比較が可能となるようにします。その際に、採用した排出係数は、実績値とともに明らかにしておきます。
・ チェックシートは、単年度の排出量を算定する形になっていますが、可能な項目については、2〜3年のデータを整理することにより、前年度比や排出量の推移を把握し、どのように改善されているか等の評価を行って、計画の策定や取組に活かすことが重要です。
事業者は、環境負荷の総量を削減することが求められていますが、一方、事業経営の観点から、経済効率性の高い環境への取組も求められています。そのため、事業者の環境への取組結果等を把握・評価する場合は、環境負荷の総量を示す指標だけでなく、経済価値を反映しながらその環境への取組の効率性を表す「環境効率指標」を把握・管理することが重要になります。代表的な環境効率指標には次のようなものが考えられます。別表のチェックシートには、活動規模を把握する欄を設け、事業活動の規模が変化する場合にも、環境への取組の効果を把握できるようになっています。また指標の設定については、事業の特性に応じて、適切なものを選んでください(全てを計算する必要はありません)。

(2)データの集め方
・ 必要な情報、データの収集・整理にあたっては、経理関係のデータや行政の統計への回答票等、事業所内に既にある情報を有効に活用します。
・ データに関する資料については、それぞれの担当部署にバラバラに保管されている、伝票ベースでしか保管されていない等のため、はじめは収集・整理に時間がかかるかもしれません。社内にある環境関連情報を環境の面から整理して、担当者が管理・把握できる仕組みを整備することが望まれます。
・ データは月単位程度の短い周期で把握すると、目標の設定や確認及び評価の際により有効です。
・ 少なくとも過去3年程度の実績をチェックできるよう適切なデータ管理を行います

表:活用できる社内の情報例

・エネルギー、資源、原材料の使用量、購入量、金額等の伝票
・石油等消費構造統計調査票の写し
・マニフェスト伝票
・廃棄物処理委託会社への支払伝票
・レンタルコピー機の請求書、支払伝票
・設備仕様書、使用説明書
・大気汚染物質排出量総合調査票の写し
・水質汚濁物質排出量調査票の写し
・計量証明書
・化学物質保管管理票
・化学物質等安全データシート