ISO22000構築のためのアドバイス(6)マネジメントシステム

ISO22000はHACCPのマネジメントシステムであると初めにお話ししました。
マネジメントシステムの考え方は、ISO14001にとてもわかりやすく書かれています。環境マネジメントシステムと言いますが、私はよく環境を忘れてマネジメントシステムをちゃんとやってくださいと言います。

でも初めてISOに取り組む方にはこれから14001をやっていただくわけにはいかないので、ここで説明します。

マネジメントシステムは、計画を立てPlan、実行しDo、その実行結果をきちんと把握しCheck、トップはその結果を次の目標に活かすよう指示するAct、です。
この考え方は、経営トップが事業の内容をしっかり把握してリーダーシップをとる事を考えています。即ち日本的な今まであった下から積み上げていく方法ではありません。しかし、決してトップが勝手にあれこれ決める中央集権を考えているのでもありません。トップは現場の状況をしっかり把握し、それを基にして自分達が進むべき道を指導してくのです。そしてそれまでの過程に、コミュニケーションによる情報共有、手順を決めて誰もが同じように出来るようにし、実行した結果が後で確認できるように記録をとる事等を必要としています。

まずPlan計画の中身です。
ISO22000では食品安全マネジメントシステムの計画という言葉があり、システム全体を立ち上げる計画を言っていますが、ここでは構築するためのアドバイスなので、マネジメントシステムのPlanとして説明します。ISO22000にこだわらす、マネジメントシステム一般の考え方ととってください。
まず現状を把握し、それをベースにして方針、目標を定めてそれをどうやって実行するかの計画を立てます。
現状把握は、食品の安全のために必要な要素、5Sや前提条件プログラムと呼んでいる一般衛生管理の要素を考えて、現在の状況を知ります。最初に述べたように、この5SやPRPが出来ていないと、後でいくら良いHACCPを作っても、うまく働きません。ISO22000の規格の中にはこのような記述はあまりありませんが、しっかりしたシステムを構築するためには必要な事柄です。また、この現状把握は、工場内すべてを行い、ISO22000の適用範囲かどうかはこだわらないで進めるべきです。何故なら、安全な食品は、生産している現場だけで達成出来るものではないからです。調査は工場の敷地から始め、建物周辺、内部、製造設備と進めていきます。工場内のあらゆる場所は従業員の控室やトイレ、食堂がある場合はそこも、そして廃棄物の処理状況等あらゆる工場内の事象を食品衛生の観点から洗い出します。
問題点があれば列挙し、問題の大きさや改善の技術的、経済的状況とを加味して、順位づけをして問題点の改善をしていきます。
このような現状を踏まえて、トップの定めた食品安全方針に基づき、食品安全の目標を定めます。
そして7章の安全な製品の計画と実現に進みます。

実際にDo実行の中身は、マネジメントシステム共通のDoとして、まずシステムを実行する責任体制の確立(ISO22000の場合は、食品安全チームリーダーの任命とチームの編成)、文書の作成と管理、内部・外部とのコミュニケーション、緊急時の対策(回収を含む)や教育訓練、工程を監視するモニタリング、それら必要な手順とその記録があります。手順と記録は、マネジメントシステムの要の要素で、日本ではなかなか実行されにくい要素です。手順を作成する場合、出来るだけ現在やっているように作成する事、必ずしも文章でなくてもいいので、図やフローチャート、漫画でも良いのです。要は、誰もが同じように出来る事が必要なのです。記録は、面倒なようですが、ときには自分達がやっている事の証明にもなりますし、交渉事では、前回の記録があれば、言った言わないの論争を避けられます。特に会議では的確な議事録を作成し、時間を有効に活用する事が生産性の向上にもなります。記録は、これからのビジネスの必須アイテムです。特に電話での交渉事は、心して記録に残すようにしましょう。特に食品行政当局に問い合わせしたりした時は、担当者名と内容と日時を記録しておく事です。
7章の安全な食品計画と実行になった時のあらゆる所で、これらの事を含んで実行されていくことになります。これらの要素は、システム全体にかかっています。

次にCheck点検です。モニタリングの記録をチェックし(特にOPRPやCCPのモニタリング記録は、記録者以外の人のチェックを必ず受けます。)、基準から外れていた場合は、その原因を究明し、再発防止策を講じます。そしてCCPの場合は、その間の製品について安全である事を確かめないと出荷できません。チェックでは又、PRPやOPRP,CCPの検証、更にシステム全体の管理手段の組み合わせなどの妥当性の確認、そして内部監査があります。

そしてこれらの実施状況を踏まえて、トップはAct見直し即ちマネジメントレビューを行います。

このような、P-D-C-Aで行っていくのが、マネジメントシステムです。HACCPをマネジメントシステムで行っていくのがISO22000です。