ISO22000構築のためのアドバイス(3)
ハザード分析(危害分析)

ハザード分析は、ISO14001の環境マネジメントシステムでの環境側面の調査に相当する部分で、食品製造上に影響を与える可能性のあるハザードの洗い出し、現状の危険因子を調査分析をする事です。

通常、ハザードは生物的、化学的、物理的ハザードがあると考えられていますが、最近の食品企業をめぐる問題を考えると、法規制の適用を正しく行う事や、従業員の力量を考えての操業など、別の視点のハザードも、ハザードとして取り込む事も必要なのではと考えます。

工場全体のハザードを減らすために行うのが、前章の前提条件プログラムPRPで、実際の製造現場のハザードを管理するのが、オペレーションPRPやCCPになります。

ハザードの種類 具体的ハザード ハザードの管理方法<予防・防御等>
生物的ハザード 微生物、寄生虫 加熱、冷蔵冷凍による管理。殺菌・消毒による死滅
化学的ハザード カビ毒等自然毒、ヒスタミン、アレルギー物質、食品添加物、殺虫剤等化学物質 サプライヤーの保証書・検査成績書等、正確な計量、適正な保管や表示による誤認防止、使用方法の教育訓練・順守等
物理的ハザード 異物の混入防止 工程管理による破損防止監視、身だしなみによる髪の毛混入防止、鼠族昆虫の排除
法規制ハザード 消費期限、賞味期限 ミスを排除し正しい表示の仕組み
力量ハザード オレーションぺンPRPやCCP工程 力量ある従業員の配置


ハザード分析を行う場合、まず製造工程のフローチャートを作り、関係する因子をすべて洗い出します。
これは製品ごとに行います。同じ製造ラインを使って、いろいろな製品を作る場合もありますが、それぞれ製品ごとに作ります。
作った後は、実際の操業現場で、実際と図との間に違いがないか、抜けているものがないかを調べます。必ず、操業している時が主ですが、始業前、終業後も行い、操業時では気付かないが、操業時に影響を及ぼす可能性のある因子がないかを確認します。
フローチャートの作成が終われば、このフローに基づいてハザード分析を行っていきます。フローチャートでは各操作毎に番号を付し、その番号と対応させて、ハザード分析(生物的、化学的、物理的)を行っていきます。一般に行われている生物的ハザード、化学的ハザード、物理的ハザードの実施をフローチャートに従って行った例を紹介します。

法規制ハザードは、コーデックスのハザードでは採用されていないが、今日の日本での食品企業の問題を考えると、ハザードとして取り上げるべきと考える。しかし、これは表にも示したように期限表示の問題なので、各製品ごとに次のような工程を最後に付け加えることで実施できる。
@ 毎朝始業前に期限表示の印字を確認し、そのコピーを記録として残し、実施者のサインと時刻、別の人による確認のサインと時刻を記入してから、実際の印字を開始する。
A 午後の操業開始時に、もう1回表示日時を確認し、記録する。
B 終業時に、もう1度、確認してから出荷する。
C 印字を製品の個包装、袋包装、段ボールとある場合は、すべてに対し同様にする。

力量ハザードは、教育訓練の延長線上にあるハザードで、的確な力量のある人間を、CCPやOPRPのある作業、或いは食品に直接接する作業に従事させる必要性である。特に食品企業は、現場はパートや派遣が大部分を占めており、人の入れ替わりも激しいので、特に力量を考えての配置を手順として確立する必要がある。
業務に従事する人全員の力量判断を行って、その一覧を作成し、常に始業時に適切な人員配置がされている事を確認する事を手順として、記録に残すようにするとよい。急に増産するような事態が最も力量ハザードの大きくなる時で、状況によっては増産できない事態も生じる事覚悟し、万一不良品を出すような事態になるよりはましと考えなくてはいけない。